EXERCISE 60分

ストーリー

田中VPoE
壁、慣性、根本原因分析 — 理論は一通り学んだ。ここからは実践だ。架空の企業を題材に、改善阻害要因の分析レポートを作成してもらう
あなた
レポートの目的は何ですか?
田中VPoE
経営層に「なぜ改善文化が根付いていないのか」を構造的に説明し、「だからこう変える必要がある」と提案するためのものだ。感覚ではなく、データと分析で語るレポートを作ってくれ

ミッション概要

項目内容
演習タイトル改善阻害要因分析レポート
想定時間60分
成果物阻害要因分析レポート(4つの壁の診断 + 根本原因分析 + レバレッジポイント)
対象組織中堅SIer ネクストシステム株式会社(架空)

前提条件

組織の概要

会社概要:
  会社名: ネクストシステム株式会社(架空)
  事業: BtoB システム開発・運用保守
  社員数: 800名
  開発部門: 500名(20チーム)
  売上: 年間120億円
  設立: 2005年
  離職率: 15%(業界平均10%)

組織構造:
  ├── 経営層(5名)
  ├── 事業部長(4名)
  ├── 部長(12名)
  ├── 課長(30名)
  ├── チームリーダー(60名)
  └── メンバー(約690名)

改善活動の現状:
  ├── 改善提案数: 月平均2件(800名中)
  ├── 提案の採用率: 10%
  ├── 提案から実行までの平均期間: 6ヶ月
  └── 改善活動に充てられる時間: 公式にはゼロ

社員アンケート結果(抜粋、5段階評価)

質問平均スコア
「改善提案がしやすい環境だと思う」2.1
「失敗しても評価に悪影響はないと思う」1.8
「業務時間内に改善活動ができると思う」1.5
「改善活動は人事評価に反映されると思う」1.3
「上司は改善提案を歓迎していると思う」2.4
「他チームの改善事例を知る機会がある」1.9
「会社の将来に対して楽観的だ」2.6
「自分の意見が組織の意思決定に影響すると思う」1.7

追加情報

項目詳細
過去の改善施策3年前に「業務改善コンテスト」を実施したが、翌年以降は予算カットで中止
評価制度年2回の成果評価。評価項目に「改善・革新」はない
会議文化定例会議が多く、平均して週15時間を会議に費やしている
ナレッジ共有社内Wikiはあるが、更新は3年前で止まっている
経営方針「安定的な受注と品質維持」が最優先

Mission 1: 4つの壁の診断

要件

アンケート結果と追加情報をもとに、以下を作成してください。

  1. 4つの壁(恐怖・無関心・制度・権力)の強度評価(5段階)
  2. 各壁の具体的な証拠(データに基づく)
  3. 壁の相互作用マップ
解答例

壁の強度評価

強度(5段階)根拠
恐怖の壁5(極めて強い)「失敗しても評価に悪影響はない」が1.8/5。失敗を罰する文化が明確
無関心の壁4(強い)「業務時間内に改善活動ができる」が1.5/5。忙しさによる無関心が顕著
制度の壁5(極めて強い)「改善活動は人事評価に反映される」が1.3/5。制度的な裏付けが皆無
権力の壁4(強い)「自分の意見が意思決定に影響する」が1.7/5。6階層の承認構造が障壁

相互作用マップ

恐怖の壁(5) ←───→ 権力の壁(4)
  │  失敗罰則が      6階層の承認で
  │  挑戦を抑制      声が届かない
  ↕                  ↕
無関心の壁(4) ←───→ 制度の壁(5)
  忙しさで           評価に含まれず
  考える余裕なし      動機が生まれない

Mission 2: 根本原因分析

要件

以下の分析を行ってください。

  1. 5 Whys分析(「改善提案がほぼ出ない」を起点に)
  2. フィッシュボーンダイアグラム(6カテゴリで原因を整理)
  3. 因果ループ図(悪循環を最低2つ特定)
解答例

5 Whys分析

Why 1: なぜ改善提案がほぼ出ないのか?
  → 提案しても採用されないと思っているから(採用率10%)

Why 2: なぜ採用率が10%なのか?
  → 評価基準が不明確で、事業部長の一存で却下されるから

Why 3: なぜ事業部長の一存なのか?
  → 改善提案を組織的に評価・実行する仕組みがないから

Why 4: なぜ仕組みがないのか?
  → 経営方針が「安定的な受注と品質維持」で、
    改善は優先事項として認識されていないから

Why 5: なぜ改善が優先事項でないのか?
  → 改善しないことによるコスト(離職率15%、非効率な会議等)が
    定量化されておらず、経営層の危機意識が低いから

根本原因: 改善しないことのコストが可視化されておらず、
         経営レベルで改善文化への投資判断ができていない

主要な悪循環ループ

ループ1: 無力感ループ 提案却下 → 無力感 → 提案減少 → 「改善不要」と経営が判断 → 制度が作られない → さらに提案が通らない

ループ2: 忙しさループ 改善しない → 非効率が蓄積 → 会議が増える(週15h) → 改善の時間がない → 改善しない


Mission 3: レバレッジポイントと提案

要件

根本原因分析の結果をもとに、以下を作成してください。

  1. レバレッジポイントを3つ特定
  2. 各ポイントへの具体的な施策
  3. 優先順位実行ロードマップ(3ヶ月分)
解答例

レバレッジポイントと施策

レバレッジポイント施策期待効果難易度
改善コストの可視化離職コスト・非効率会議コストを金額で算出し経営層に提示経営レベルの危機意識醸成
最初の成功体験1チームをパイロットにして「会議削減」を実行無力感ループの切断
評価制度の変更評価項目に「改善・革新」を追加(配点10%)制度の壁の除去

3ヶ月ロードマップ

アクション成果指標
1ヶ月目改善コスト算出、経営層プレゼン、パイロットチーム選定経営層の承認獲得
2ヶ月目パイロットチームで会議削減(週15h→10h)実施週5時間の創出
3ヶ月目パイロット結果の全社共有、評価制度変更の提案改善提案数月5件以上

達成度チェック

観点達成基準
壁の診断4つの壁がデータに基づいて評価されている
根本原因表面的な症状ではなく構造的な原因が特定されている
分析手法5 Whys、フィッシュボーン、因果ループが適切に使われている
レバレッジポイント小さな変化で大きな効果を生む介入点が特定されている
実行可能性施策が具体的で、3ヶ月で着手可能なものになっている
データの活用アンケートスコアや数値データが根拠として引用されている

推定所要時間: 60分