EXERCISE 90分

ストーリー

田中VPoE
ここまで5つのStepを通じて、データ基盤戦略の全要素を学んできた。データ資産の棚卸し、ガバナンス体制、データ民主化、品質管理、ROI最大化 — すべてを統合するときが来た
あなた
いよいよ集大成ですね。これまでの各Stepの成果物を統合するんですか?
田中VPoE
その通りだ。FreshCart社の経営会議に提出する「データ基盤戦略書」を作成する。これは単にこれまでの成果物を並べるだけではない。全体を一貫したストーリーとして語り、経営層を説得できる文書にする必要がある
あなた
経営層が読んで「よし、やろう」と決断できるレベルの文書ですね
田中VPoE
まさにそうだ。技術の羅列ではなく、ビジネス価値を中心に据えた戦略書を作ろう。CDOがいない組織では、この戦略書があなたの代わりにデータの価値を語ってくれる

ミッション概要

項目内容
演習タイトルFreshCart株式会社 データ基盤戦略書
想定時間90分
成果物データ基盤戦略書(全6章構成、経営会議提出レベル)
対象組織FreshCart株式会社(Step 1-5と同じ)

前提条件

Step 1-5のすべての前提条件と演習成果を活用してください。

戦略書の期待水準

観点基準
読者CEO、CFO、CTO、事業部長(非エンジニアを含む)
ページ数エグゼクティブサマリー1ページ + 本文15-20ページ相当
トーンビジネス言語。技術用語は最小限、必要な場合は解説付き
数字主要な数字には算出根拠を明示
アクション「何をいつまでに誰がやるか」が明確

Mission 1: エグゼクティブサマリーと現状分析

要件

データ基盤戦略書の第1章と第2章を作成してください。

第1章: エグゼクティブサマリー

  • 戦略の核心メッセージ(1文)
  • 現状の課題(3つ)
  • 目指す姿(3年後のビジョン)
  • 投資規模と期待リターン
  • 最初のマイルストーン

第2章: 現状分析

  • データ資産の全体像
  • データ成熟度評価
  • 品質問題によるビジネスインパクト
  • 競合との比較(推定)
解答例

第1章: エグゼクティブサマリー

核心メッセージ: 「データを全社の共有資産として戦略的に活用し、売上20%成長と意思決定スピードの10倍化を実現する」

現状の課題:

  1. データサイロ: 5部門に分散した6つのデータストアが未統合。横断分析が不可能
  2. 品質とガバナンスの不在: 品質問題で年間7,100万円の損失。個人情報管理も不十分
  3. データ活用の属人化: 分析はデータチーム10名に集中。依頼待ち平均5日。データ活用率12%

3年後のビジョン: 全マネージャーがセルフサービスでデータ分析し、データに基づく意思決定が組織文化として定着。データ品質コスト80%削減、解約率40%低下、在庫廃棄30%削減を実現

投資と期待リターン: 3年間で総額7.2億円の投資、5.4億円のベネフィット。2年7ヶ月で投資回収。3年目以降は年間2.6億円のネットベネフィット

最初のマイルストーン: Q2末までに解約予測モデル本番稼働、主要ダッシュボード5本完成

第2章: 現状分析

データ資産の全体像:

ドメインシステムデータ量オーナー品質
顧客PostgreSQL50万件EC開発住所不備8%
注文PostgreSQL80万件/月EC開発欠損率2%
商品PostgreSQL15,000SKUEC開発重複率5%
在庫MySQL + Excel15,000SKUサプライチェーン棚卸差異3%
行動ログBigQuery3TB/年EC開発未検証
分析マートRedshift2TBデータチーム日次遅延あり

データ成熟度: Level 1.5(Initial→Managedの移行中)。特にガバナンス(Level 1)、メタデータ管理(Level 1)、セルフサービス(Level 1)が低い

品質問題によるビジネスインパクト: 年間7,100万円(売上の1.2%)

  • 配送失敗: 1,280万円、在庫損失: 3,000万円、手動修正: 1,000万円、その他: 1,820万円

Mission 2: 戦略の5本柱

要件

データ基盤戦略書の第3章を作成してください。

第3章: データ基盤戦略の5本柱

各柱について以下を記述:

  1. ガバナンス体制: 体制設計、ポリシー体系、導入ロードマップ
  2. データ民主化: セルフサービス基盤、リテラシープログラム、マーケットプレイス
  3. データ品質: 品質フレームワーク、SLA、品質文化醸成
  4. 技術基盤: アーキテクチャ設計、ツール選定
  5. ROI最大化: ユースケースポートフォリオ、価値実現計画
解答例

第3章: データ基盤戦略の5本柱

柱1: ガバナンス体制

項目設計
体制CTO議長のガバナンス委員会(月次)、6ドメインのオーナー・スチュワード体制
ポリシーデータ分類(4段階機密度)、アクセス制御(RBAC)、保持・廃棄ポリシー
優先対応個人情報保護法対応(Month 1)、プライバシーポリシー更新(Month 1)
ロードマップ基盤構築(M1-3)→重点領域(M3-6)→全社展開(M6-12)

柱2: データ民主化

項目設計
セルフサービス基盤4層構造: OpenMetadata + dbt Semantic Layer + Lake Formation + Looker/Metabase
リテラシーBronze(全社員)4h + Silver(マネージャー)8h + Gold(希望者)24h
データチャンピオン各部門1名、計5名。部門内の推進役
目標1年後: BIツールMAU 60名、セルフサービス率60%

柱3: データ品質

項目設計
フレームワーク6次元品質モデル + 3層構造(チェックエンジン→管理プロセス→ガバナンス)
SLATier 1(完全性99.5%)、Tier 2(98%)、Tier 3(95%)
ツールdbt tests(拡張)+ Great Expectations + Slack連携
文化品質コスト可視化、品質バジェット(15%)、品質賞、ポストモーテム文化

柱4: 技術基盤

現状目標
データソース分散(PostgreSQL、MySQL、SaaS)CDC + API連携で統合
データ処理Airflow(一部)Airflow全面展開 + dbt
DWHRedshift(部分利用)Redshift全社DWH化
分析Looker(20席)Looker拡張 + Metabase
カタログなしOpenMetadata

柱5: ROI最大化

ホライズンユースケース期待効果(年間)
H1(50%)レポート自動化、品質改善3,800万円
H2(30%)解約予測、需要予測6,720万円
H3(20%)顧客360、パーソナライズ7,200万円(2年目以降)

Mission 3: 実行計画と投資計画

要件

データ基盤戦略書の第4章、第5章、第6章を作成してください。

第4章: 実行ロードマップ

  • 3年間の全体タイムライン
  • 1年目の四半期別詳細計画
  • 各フェーズのマイルストーンとサクセスクライテリア

第5章: 投資計画

  • 3年間の投資計画(カテゴリ別内訳)
  • ROI試算(年次、累計)
  • リスクと緩和策

第6章: 成功の条件と次のアクション

  • 戦略成功のための5つの条件
  • 経営会議での承認依頼事項
  • 次の30日間のアクション
解答例

第4章: 実行ロードマップ

3年間の全体タイムライン:

期間テーマ主要マイルストーン
Year 1基盤構築 + Quick Winガバナンス体制確立、解約予測本番稼働、セルフBI全社展開
Year 2拡張 + 成長顧客360完成、パーソナライズ本番、全社品質スコア85点
Year 3最適化 + 変革データドリブン文化定着、新規ユースケース年10件自走

1年目の四半期別計画:

四半期ガバナンス民主化品質ユースケース
Q1体制構築、PII対応Looker展開開始、Bronze研修dbt tests拡大解約予測PoC
Q2ポリシー整備Silver研修、ダッシュボード5本品質ダッシュボード解約予測本番
Q3全データ分類完了Metabase導入、セルフ率40%Great Expectations導入需要予測PoC
Q4メタデータ管理開始マーケットプレイスv0.1品質文化施策開始需要予測本番

第5章: 投資計画

カテゴリYear 1Year 2Year 3合計
人材1.2億1.2億0.8億3.2億
基盤・ツール0.8億0.6億0.4億1.8億
ユースケース開発0.6億0.5億0.3億1.4億
民主化・教育0.2億0.1億0.1億0.4億
予備費0.2億0.2億0.0億0.4億
合計3.0億2.6億1.6億7.2億

ROI試算:

指標Year 1Year 2Year 3累計
ベネフィット0.86億1.89億2.63億5.38億
投資3.0億2.6億1.6億7.2億
年次ROI-71%-27%+64%
投資回収2年7ヶ月

第6章: 成功の条件と次のアクション

成功の5条件:

  1. 経営層のスポンサーシップ: CTOが戦略の推進責任者として月次で進捗を経営会議に報告
  2. 組織横断の参画: ガバナンス委員会に全事業部長が参加し、データを「全社の資産」として位置づけ
  3. Quick Winの実現: Q2末までに解約予測の成果を出し、データ投資の信頼を獲得
  4. 人材の確保: Q1中にデータエンジニア・データサイエンティストの採用を完了
  5. 継続的な改善: 四半期ごとにROIを評価し、優先順位をリバランス

承認依頼事項:

  1. Year 1の投資予算3.0億円の承認
  2. CTOをデータ戦略推進責任者に任命
  3. ガバナンス委員会の設置(月次、全事業部長参加)
  4. データチーム5名増員の採用承認

次の30日間のアクション:

アクション担当
Week 1ガバナンス委員会のキックオフCTO
Week 1採用活動開始(5名)HR + データチーム
Week 2個人情報保護法対応の緊急点検法務 + データチーム
Week 2解約予測PoCの開始データサイエンティスト
Week 3Looker追加ライセンスの調達IT + データチーム
Week 3Bronze研修の教材設計開始データチーム
Week 4品質ダッシュボードの設計データエンジニア
Week 4dbt tests拡大計画の策定データエンジニア

達成度チェック

観点達成基準
一貫性全6章が一貫したストーリーとして繋がっている
ビジネス視点技術の羅列ではなく、ビジネス価値を中心に据えている
数字の根拠主要な数字に算出根拠が示されている
実行可能性300名規模の組織で実行可能な計画になっている
経営層への説得力CEO/CFOが読んで「やろう」と判断できる内容になっている
アクション明確性「何を、いつまでに、誰が」が明確に記述されている
リスク考慮投資リスクと緩和策が検討されている
段階的アプローチQuick Win→基盤構築→拡張→変革の段階が設計されている

推定所要時間: 90分