ストーリー
田
田中VPoE
棚卸し手法、成熟度モデル、戦略フレームワーク — 理論は一通り学んだ。ここからは実践だ。架空のD2C企業のデータ資産を棚卸しし、成熟度を評価してもらう
田
田中VPoE
そうだ。このレポートは後のStepで策定するデータ戦略の土台になる。経営会議で「データ基盤戦略プロジェクト」の承認を得るための重要な文書だ。数字と根拠で語れるレポートを作ってくれ
ミッション概要
| 項目 | 内容 |
|---|
| 演習タイトル | データ資産棚卸しレポート |
| 想定時間 | 60分 |
| 成果物 | データ資産棚卸しレポート(棚卸し結果 + 成熟度評価 + 戦略方向性) |
| 対象組織 | D2C企業 FreshCart株式会社(架空) |
前提条件
組織の概要
会社概要:
会社名: FreshCart株式会社(架空)
事業: D2C(食品・日用品のEC + 定期便)
社員数: 300名
開発部門: 80名(5チーム)
売上: 年間60億円
会員数: 50万人
設立: 2018年
月間注文数: 80万件
部門構成:
├── EC開発チーム(25名): Webサイト・アプリ開発
├── サプライチェーンチーム(15名): 在庫・物流管理
├── データチーム(10名): 分析基盤・レポート
├── マーケティング(5名エンジニア含む): CRM・広告・キャンペーン
└── SRE/インフラチーム(10名): インフラ・セキュリティ
(残り15名: PM、デザイナー等)
各チームのデータストア
| チーム | データストア | 主要データ | データ量 | 更新頻度 |
|---|
| EC開発 | PostgreSQL 14, Redis | 顧客、注文、商品、カート | 500GB | リアルタイム |
| EC開発 | BigQuery | ユーザー行動ログ | 3TB/年 | ニアリアルタイム |
| サプライチェーン | MySQL 8.0, Excel | 在庫、発注、配送、仕入先 | 100GB | 日次バッチ |
| データチーム | Redshift, S3 | 分析用マート | 2TB | 日次バッチ |
| マーケティング | Salesforce, GA4, Braze | 顧客セグメント、広告、メール | SaaS上 | リアルタイム |
| SRE | CloudWatch, Datadog | メトリクス、ログ | 1TB/年 | リアルタイム |
追加情報
| 項目 | 詳細 |
|---|
| 顧客IDの統合状況 | EC会員ID、Salesforce ContactID、GA4 ClientIDが未統合 |
| データパイプライン | Airflow(データチーム管理)、手動Excelレポート(サプライチェーン) |
| BIツール | Looker(データチーム + 一部マネージャー)、Excel(その他) |
| データ品質 | 注文データの欠損率2%、商品マスターの重複率5%、住所不備8% |
| コンプライアンス | 個人情報保護法対応は「していると思う」レベル |
| ドキュメント | データ定義書なし、ERDは一部のみ、Notionにメモ程度 |
Mission 1: データ資産の棚卸し
要件
前提条件の情報をもとに、以下を作成してください。
- データ資産分類表(データドメイン、所在地、オーナー、機密度、重要度、品質状態)
- データフローマップ(ソースから消費先までの全体像)
- 課題一覧(カテゴリ、内容、影響度、緊急度)
解答例
データ資産分類表
| データドメイン | 所在地 | オーナー | 機密度 | 重要度 | 品質状態 |
|---|
| 顧客マスター | PostgreSQL | EC開発 | Restricted | Critical | 住所不備8% |
| 注文トランザクション | PostgreSQL | EC開発 | Confidential | Critical | 欠損率2% |
| 商品マスター | PostgreSQL | EC開発 | Internal | High | 重複率5% |
| ユーザー行動ログ | BigQuery | EC開発 | Internal | High | 未検証 |
| 在庫データ | MySQL | サプライチェーン | Internal | Critical | 棚卸差異3% |
| 配送データ | MySQL + Excel | サプライチェーン | Confidential | High | Excel手入力でエラー多い |
| 分析マート | Redshift | データチーム | Confidential | High | 日次遅延あり |
| 顧客セグメント | Salesforce | マーケティング | Confidential | High | EC会員IDと未連携 |
| 広告・キャンペーン | GA4/Braze | マーケティング | Internal | Medium | アトリビューション不完全 |
| インフラメトリクス | CloudWatch/Datadog | SRE | Internal | High | 良好 |
データフローマップ
[データソース]
ECサイト ──→ PostgreSQL ──→ CDC ──→ BigQuery(行動ログ)
ECサイト ──→ PostgreSQL ──→ Airflow ──→ Redshift(分析マート)
WMS ──→ MySQL ──→ 手動Export ──→ Excel ──→ メール共有
Salesforce ──→ API ──→ Redshift(一部のみ)
GA4 ──→ BigQuery Export ──→ Redshift(未実装)
[データ消費]
Redshift ──→ Looker ──→ 経営ダッシュボード(月次)
Excel ──→ 手動レポート ──→ サプライチェーン会議(週次)
Salesforce ──→ 営業レポート(CRM上)
※ 横断分析は不可能な状態
課題一覧
| カテゴリ | 課題 | 影響度 | 緊急度 |
|---|
| ID統合 | 顧客IDが3システムで未統合 | 極めて高い | 高 |
| 品質 | 商品マスターの重複率5%が注文にも波及 | 高 | 高 |
| サイロ化 | サプライチェーンデータがExcelで孤立 | 高 | 中 |
| コンプライアンス | 個人情報の取り扱いが曖昧 | 極めて高い | 極めて高い |
| ドキュメント | データ定義書がなく属人化 | 高 | 中 |
| 分析ボトルネック | データチーム依存、依頼待ち平均5日 | 高 | 中 |
Mission 2: データ成熟度評価
要件
7つの観点で FreshCart社のデータ成熟度を評価してください。
- 7観点のスコアリング(各1-5点)
- 総合レベルの判定
- 各観点の根拠
解答例
成熟度スコアリング
| 観点 | スコア | 根拠 |
|---|
| データアーキテクチャ | 2 | 部門ごとにDBが分離。Redshiftに一部統合されているが全社統合には程遠い |
| データガバナンス | 1 | ポリシーなし、オーナー未定義、コンプライアンス対応が曖昧 |
| データ品質 | 2 | 品質問題は認識されているが体系的な管理・監視はない |
| メタデータ管理 | 1 | データ定義書なし、ERDは一部のみ、Notionにメモ程度 |
| データリテラシー | 2 | データチーム+一部マネージャーのみ。大半はExcel依存 |
| セルフサービス | 1 | Lookerは一部のみ。ほとんどがデータチームへの依頼待ち |
| 価値測定 | 1 | データ投資のROIは測定されていない |
総合判定
Level 1.5(InitialとManagedの中間)
一部のデータ(EC系)は管理されているが、組織全体としてはInitial段階。ガバナンス、メタデータ管理、セルフサービスが特に弱い。まずLevel 2(Managed)を目標に基礎固めが必要。
Mission 3: 戦略方向性の提案
要件
棚卸し結果と成熟度評価を踏まえ、データ戦略キャンバスの主要要素を埋めてください。
- ビジネスゴール(データ戦略が支援するビジネス目標3つ)
- ギャップ分析(最も深刻なギャップ上位3つ)
- Quick Win(3ヶ月以内に着手すべき施策3つ)
- 1年後の目標レベル
解答例
ビジネスゴール
- LTV最大化: 顧客一人あたりの生涯価値を20%向上(パーソナライズ、解約予測)
- 在庫最適化: 廃棄率を30%削減(需要予測、自動発注)
- 意思決定のスピード: 分析依頼の平均リードタイムを5日→1日に短縮
ギャップ分析
| ギャップ | 現状 | 目標 | 施策 |
|---|
| 顧客ID統合 | 3システムで分断 | 統合顧客ID | ID統合基盤の構築 |
| データガバナンス | ルールなし | ポリシー+オーナー制度 | ガバナンス体制の構築 |
| セルフサービス | データチーム依存 | Looker全社展開 | BIツール展開+教育 |
Quick Win(3ヶ月以内)
- 個人情報保護法対応の緊急点検: コンプライアンスリスクが最大。即座に着手
- 商品マスターの重複解消: 影響範囲が広く、比較的短期間で対応可能
- Lookerの全マネージャー展開: 既存ツールの展開で分析ボトルネックを軽減
1年後の目標
Level 2.5(Managed → Definedへの移行中)
- データアーキテクチャ: 2→3(全社データプラットフォーム構築)
- データガバナンス: 1→3(ポリシー策定、オーナー制度導入)
- データ品質: 2→3(品質基準と自動監視の導入)
- メタデータ管理: 1→2(データカタログの導入開始)
- データリテラシー: 2→3(全マネージャーがBIツールを使用可能)
- セルフサービス: 1→2(定型レポートのセルフサービス化)
- 価値測定: 1→2(主要KPIの定義と測定開始)
達成度チェック
| 観点 | 達成基準 |
|---|
| 棚卸しの網羅性 | 全チームのデータ資産が分類表に含まれている |
| 分類の適切さ | 機密度・重要度が根拠を持って設定されている |
| フローの可視化 | データソースから消費先までの全体像が描けている |
| 成熟度評価の根拠 | 各観点のスコアに具体的な根拠が示されている |
| 戦略方向性 | ビジネスゴールから逆算した提案になっている |
| Quick Winの妥当性 | 短期間で成果が見え、リスク軽減に寄与する施策が選ばれている |
推定所要時間: 60分