LESSON 30分

ストーリー

田中VPoE
標準を策定したら、必ず「例外」が発生する。この例外をどう扱うかが標準の命運を分ける
あなた
例外を一切認めないと厳格すぎるし、何でも認めると標準が意味をなさなくなりますね
田中VPoE
その通りだ。例外処理の仕組みがない標準は2つの結末を迎える。ひとつは「闇で無視される」。もうひとつは「無理やり従った結果、非効率な実装が生まれる」。どちらも最悪だ
あなた
正式な例外プロセスを用意するわけですね
田中VPoE
そうだ。例外を「許可」するのではなく「管理」する。理由を記録し、期限を設け、定期的にレビューする。これが健全な標準運用の鍵だ

例外処理の基本設計

例外の種類

種類説明承認レベル
恒久的例外技術的な制約により標準に従えないレガシーシステムの移行が不可能委員会承認
時限的例外一時的に標準を逸脱する(期限付き)移行完了まで旧技術を継続テックリード承認
実験的例外新技術の検証のため標準外を許可新言語のパイロットプロジェクト委員会承認

例外申請のフロー

例外申請フロー:

1. 申請
   └── 標準逸脱の理由、影響範囲、代替策を記載

2. 審査
   ├── Must標準の例外 → 技術標準委員会で審査
   ├── Should標準の例外 → テックリード + 1名の委員で審査
   └── May標準 → 例外申請不要

3. 判定
   ├── 承認: 条件付き(期限、モニタリング要件)
   ├── 条件付き承認: 追加条件の充足が必要
   └── 却下: 標準に従うことを要求

4. 記録
   └── 例外レジストリに登録

5. 定期レビュー
   └── 四半期ごとに全例外をレビュー

例外申請テンプレート

# 例外申請: [タイトル]

## 基本情報

| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 申請者 | [名前 / チーム] |
| 申請日 | YYYY-MM-DD |
| 対象標準 | [逸脱する標準の名称] |
| 例外種別 | 恒久的 / 時限的 / 実験的 |
| 希望期限 | YYYY-MM-DD(時限的の場合) |

## 逸脱の内容

[標準のどの項目に対して、どのように逸脱するか]

## 理由

[なぜ標準に従えないか。技術的な制約を具体的に記載]

## 影響範囲

[この逸脱が影響するサービス、チーム、プロセス]

## リスク評価

[逸脱によって生じるリスクとその緩和策]

## 代替策

[標準に従う場合の代替案と、それが困難な理由]

## 終了条件

[時限的例外の場合、いつ・どのように標準に準拠するか]

例外レジストリ

レジストリの管理

すべての承認済み例外を一元管理するレジストリを運用します。

フィールド説明
例外ID一意の識別子
対象標準逸脱する標準
申請チーム申請したチーム
例外種別恒久的/時限的/実験的
承認日承認された日付
有効期限時限的例外の場合
ステータス有効/期限切れ/解消済み
レビュー日次回レビュー予定日

例外レジストリの例

ID対象標準チーム種別内容期限ステータス
EXC-001推奨言語課金チーム時限的Java継続使用2026-Q2有効
EXC-002ログ標準検索チーム時限的独自ログ形式2026-Q1期限切れ
EXC-003推奨言語データPF恒久的Python使用-有効
EXC-004CI/CD標準検索チーム時限的Jenkins使用2026-Q3有効

例外の定期レビュー

レビューの観点

観点チェック項目
期限の確認時限的例外は期限内か
進捗の確認移行計画は順調に進んでいるか
リスクの再評価例外によるリスクが変化していないか
例外の解消標準に準拠できるようになったか
恒久的例外の妥当性恒久的例外の理由が今も有効か

レビューの結果アクション

結果アクション
順調次回レビューまで継続
遅延移行計画の見直し、追加リソースの投入
リスク増大期限の前倒し、緩和策の追加
理由消失例外の取り消し、標準への準拠を要求

例外管理のアンチパターン

アンチパターン問題対策
例外の乱発例外だらけで標準が意味をなさない例外率の上限を設定(全サービスの20%以内)
期限なし例外「いつか対応する」が永遠に来ない時限的例外は最長1年。更新申請が必要
レビューなし承認後にフォローアップがない四半期レビューを必須化
闇の逸脱申請せずに標準を無視自動チェックツールで検出

「例外処理は標準の”安全弁”だ。安全弁のない圧力鍋は爆発する。ただし安全弁が常に開いていたら、圧力は永久にかからない」 — 田中VPoE


まとめ

ポイント内容
3つの例外種別恒久的、時限的、実験的
申請フロー申請→審査→判定→記録→定期レビュー
例外レジストリ全例外を一元管理し、可視化する
定期レビュー四半期ごとに全例外をレビュー

チェックリスト

  • 3つの例外種別を理解した
  • 例外申請のフローとテンプレートを理解した
  • 例外レジストリの管理方法を理解した
  • 例外管理のアンチパターンと対策を理解した

次のステップへ

次は演習「RFC/ADRプロセスを構築しよう」に進みます。Step 3で学んだRFC、ADR、ガバナンス体制、例外処理を統合した実践演習です。


推定読了時間: 30分