ストーリー
田
田中VPoE
標準を策定したら、必ず「例外」が発生する。この例外をどう扱うかが標準の命運を分ける
あなた
例外を一切認めないと厳格すぎるし、何でも認めると標準が意味をなさなくなりますね
あ
田
田中VPoE
その通りだ。例外処理の仕組みがない標準は2つの結末を迎える。ひとつは「闇で無視される」。もうひとつは「無理やり従った結果、非効率な実装が生まれる」。どちらも最悪だ
田
田中VPoE
そうだ。例外を「許可」するのではなく「管理」する。理由を記録し、期限を設け、定期的にレビューする。これが健全な標準運用の鍵だ
例外処理の基本設計
例外の種類
| 種類 | 説明 | 例 | 承認レベル |
|---|
| 恒久的例外 | 技術的な制約により標準に従えない | レガシーシステムの移行が不可能 | 委員会承認 |
| 時限的例外 | 一時的に標準を逸脱する(期限付き) | 移行完了まで旧技術を継続 | テックリード承認 |
| 実験的例外 | 新技術の検証のため標準外を許可 | 新言語のパイロットプロジェクト | 委員会承認 |
例外申請のフロー
例外申請フロー:
1. 申請
└── 標準逸脱の理由、影響範囲、代替策を記載
2. 審査
├── Must標準の例外 → 技術標準委員会で審査
├── Should標準の例外 → テックリード + 1名の委員で審査
└── May標準 → 例外申請不要
3. 判定
├── 承認: 条件付き(期限、モニタリング要件)
├── 条件付き承認: 追加条件の充足が必要
└── 却下: 標準に従うことを要求
4. 記録
└── 例外レジストリに登録
5. 定期レビュー
└── 四半期ごとに全例外をレビュー
例外申請テンプレート
# 例外申請: [タイトル]
## 基本情報
| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 申請者 | [名前 / チーム] |
| 申請日 | YYYY-MM-DD |
| 対象標準 | [逸脱する標準の名称] |
| 例外種別 | 恒久的 / 時限的 / 実験的 |
| 希望期限 | YYYY-MM-DD(時限的の場合) |
## 逸脱の内容
[標準のどの項目に対して、どのように逸脱するか]
## 理由
[なぜ標準に従えないか。技術的な制約を具体的に記載]
## 影響範囲
[この逸脱が影響するサービス、チーム、プロセス]
## リスク評価
[逸脱によって生じるリスクとその緩和策]
## 代替策
[標準に従う場合の代替案と、それが困難な理由]
## 終了条件
[時限的例外の場合、いつ・どのように標準に準拠するか]
例外レジストリ
レジストリの管理
すべての承認済み例外を一元管理するレジストリを運用します。
| フィールド | 説明 |
|---|
| 例外ID | 一意の識別子 |
| 対象標準 | 逸脱する標準 |
| 申請チーム | 申請したチーム |
| 例外種別 | 恒久的/時限的/実験的 |
| 承認日 | 承認された日付 |
| 有効期限 | 時限的例外の場合 |
| ステータス | 有効/期限切れ/解消済み |
| レビュー日 | 次回レビュー予定日 |
例外レジストリの例
| ID | 対象標準 | チーム | 種別 | 内容 | 期限 | ステータス |
|---|
| EXC-001 | 推奨言語 | 課金チーム | 時限的 | Java継続使用 | 2026-Q2 | 有効 |
| EXC-002 | ログ標準 | 検索チーム | 時限的 | 独自ログ形式 | 2026-Q1 | 期限切れ |
| EXC-003 | 推奨言語 | データPF | 恒久的 | Python使用 | - | 有効 |
| EXC-004 | CI/CD標準 | 検索チーム | 時限的 | Jenkins使用 | 2026-Q3 | 有効 |
例外の定期レビュー
レビューの観点
| 観点 | チェック項目 |
|---|
| 期限の確認 | 時限的例外は期限内か |
| 進捗の確認 | 移行計画は順調に進んでいるか |
| リスクの再評価 | 例外によるリスクが変化していないか |
| 例外の解消 | 標準に準拠できるようになったか |
| 恒久的例外の妥当性 | 恒久的例外の理由が今も有効か |
レビューの結果アクション
| 結果 | アクション |
|---|
| 順調 | 次回レビューまで継続 |
| 遅延 | 移行計画の見直し、追加リソースの投入 |
| リスク増大 | 期限の前倒し、緩和策の追加 |
| 理由消失 | 例外の取り消し、標準への準拠を要求 |
例外管理のアンチパターン
| アンチパターン | 問題 | 対策 |
|---|
| 例外の乱発 | 例外だらけで標準が意味をなさない | 例外率の上限を設定(全サービスの20%以内) |
| 期限なし例外 | 「いつか対応する」が永遠に来ない | 時限的例外は最長1年。更新申請が必要 |
| レビューなし | 承認後にフォローアップがない | 四半期レビューを必須化 |
| 闇の逸脱 | 申請せずに標準を無視 | 自動チェックツールで検出 |
「例外処理は標準の”安全弁”だ。安全弁のない圧力鍋は爆発する。ただし安全弁が常に開いていたら、圧力は永久にかからない」 — 田中VPoE
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|
| 3つの例外種別 | 恒久的、時限的、実験的 |
| 申請フロー | 申請→審査→判定→記録→定期レビュー |
| 例外レジストリ | 全例外を一元管理し、可視化する |
| 定期レビュー | 四半期ごとに全例外をレビュー |
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次は演習「RFC/ADRプロセスを構築しよう」に進みます。Step 3で学んだRFC、ADR、ガバナンス体制、例外処理を統合した実践演習です。
推定読了時間: 30分