EXERCISE 90分

ストーリー

田中VPoE
ここまでの3つのStepで、戦略分析、ROI/TCO、リスク分析の材料を揃えてきた。そしてStep 4ではエグゼクティブサマリー、ストーリーテリング、データ可視化、提案書構成を学んだ。今回の演習で、すべてを統合した戦略提案書を作成する
あなた
TechFlow社のクラウド移行プロジェクトの最終提案書ですね
田中VPoE
そうだ。来週の経営会議でCEO、CFO、COOに提案する想定だ。20分のプレゼン時間と10分のQ&A。この30分で投資承認を勝ち取れ
あなた
Step 1-4で作成した成果物を統合して、説得力のある1本の提案書にまとめます

ミッション概要

項目内容
演習タイトル経営会議向け戦略提案書の作成
想定時間90分
成果物戦略提案書(エグゼクティブサマリー + 5セクション)
提案先CEO、CFO、COO
プレゼン想定20分プレゼン + 10分Q&A

Mission 1: エグゼクティブサマリーの作成

要件

1-2ページのエグゼクティブサマリーを作成してください。以下の6要素を含むこと。

  1. 背景と課題(Why)
  2. 提案内容(What)
  3. 期待効果(How much)
  4. タイムライン(When)
  5. 主要リスクと対策(What if)
  6. 承認依頼事項(Ask)
解答例

背景: 当社の営業利益率8%は業界平均12%を下回り、リリース頻度月1回は競合の1/4です。チャーンレート月次1.5%(業界平均0.8%)の主因はプロダクト進化の遅れであり、年換算16.6%の解約はLTV/CAC比率を悪化させています。来年の大型顧客セキュリティ監査への対応も急務です。

提案: 18ヶ月でクラウド移行+CI/CD整備を実施し、リリース頻度を月1回→週2回、運用コストを年間35%削減、可用性を99.5%→99.9%に向上させます。

投資と効果:

  • 投資額: Phase 1 5,000万円 / 3年累計 3億円
  • 年間効果(Year 3以降): コスト削減1.1億円 + 売上貢献2,500万円
  • 5年NPV: 6,400万円(IRR 16%、回収期間2.8年)
  • リスク調整後ROI: 19%

タイムライン:

  • Phase 1(0-6ヶ月): CI/CD整備+セキュリティ基盤 → リリース頻度2倍
  • Phase 2(7-18ヶ月): クラウド移行+可観測性 → コスト30%削減
  • Phase 3(19-36ヶ月): マイクロサービス化 → 週次リリース実現

主要リスクと対策:

  1. DB移行遅延(EMV 1,800万円)→ 移行リハーサル3回で確率70%低減
  2. Oracle依存コード(EMV 1,000万円)→ 事前調査で工数を精緻化
  3. テックリード離職(EMV 1,000万円)→ ナレッジ分散+リテンション施策

承認依頼:

  1. Phase 1予算5,000万円+リスク準備金1,000万円の承認
  2. 専任15名体制(社内12名+外部3名)の確保
  3. Phase 2はGate 1レビュー(6ヶ月後)後に改めて承認判断

Mission 2: 提案本文の作成(セクション2-5)

要件

Step 1-3の演習成果を統合し、以下の4セクションを作成してください。各セクションは要点のみ記載し、詳細はAppendixに回します。

セクション2: 背景と課題分析

  • PEST分析の要約(3-4行)
  • SWOT分析のクロスSWOT結論
  • 「なぜ今投資が必要か」の結論

セクション3: 提案内容

  • DXロードマップ概要
  • 実施体制
  • ゲートレビュー計画

セクション4: 財務分析

  • TCOサマリー(3年間)
  • ROI/NPV/IRR
  • シナリオ分析(楽観/基本/悲観)
  • 「何もしない」コストとの比較

セクション5: リスク分析

  • 上位5リスクの一覧
  • 緩和策サマリー
  • コンティンジェンシープラン要約
  • リスク準備金の推奨
解答例

セクション2: 背景と課題分析

外部環境: 個人情報保護法の改正強化、エンジニア人件費年5%上昇、DX市場の拡大、AI技術の急進化が同時進行。技術基盤の近代化は事業存続の必須条件。

SWOT結論: 当社の強み(12年の顧客基盤1,500社)を活かしつつ、弱み(レガシーシステム)を克服することで、DX市場の拡大という機会を捉える(WO戦略)。クラウド移行+CI/CD整備がその第一歩。

結論: 競合との技術格差は月を追うごとに拡大。今投資すれば2.8年で回収できるが、2年後に同じ投資を行えば回収は5年以上かかる。


セクション3: 提案内容

DXロードマップ: Phase 1(基盤強化6ヶ月)→ Phase 2(クラウド移行12ヶ月)→ Phase 3(差別化12ヶ月)の3フェーズ。

体制: 社内12名+外部3名=15名体制。PM1名、テックリード1名、インフラ5名、アプリ5名、外部AWS専門家3名。

ゲートレビュー: Phase 1終了時にGate 1(CI/CD稼働確認、セキュリティ監査対応確認)。KPIが目標の80%未満の場合、Phase 2のスコープを見直し。


セクション4: 財務分析

3年TCO: 投資案5.0億円 vs 現状維持11.9億円 → 6.9億円の削減

指標基本シナリオ
5年NPV+6,400万円
IRR16%
回収期間2.8年

シナリオ分析: 楽観(NPV +1.2億円、IRR 22%) / 基本(NPV +6,400万円、IRR 16%) / 悲観(NPV -3,500万円、IRR 8%)

「何もしない」コスト: 3年間で累計5億円の機会損失(人件費増+障害コスト増+顧客流出)


セクション5: リスク分析

上位5リスクの対策前EMV合計: 5,000万円 対策投資: 1,250万円 対策後EMV合計: 1,550万円(70%削減)

コンティンジェンシー: DB移行遅延時はRDS for Oracleにフォールバック、テックリード離職時は外部アーキテクト投入。

リスク準備金: 2,500万円(P80)をPhase 1予算に計上推奨。


Mission 3: 承認依頼事項の明確化

要件

経営会議で承認を求める事項を、具体的かつ明確にリストアップしてください。

  1. 予算(Phase 1の詳細 + リスク準備金)
  2. 体制(専任/兼任の区分、外部パートナーの契約)
  3. 意思決定事項(今回決めること、次回以降に決めること)
  4. 次のアクション(承認後の具体的な動き)
解答例

承認依頼事項:

  1. 予算: Phase 1 5,000万円 + リスク準備金1,000万円 = 合計6,000万円(FY20XX上期)
  2. 体制: 専任12名(開発部5名、インフラ部5名、QA部1名、PM1名)の6ヶ月配置転換。外部パートナー3名の契約(AWS認定アーキテクト1名、移行支援2名、月額250万円)
  3. 意思決定: Phase 1のGo。Phase 2は6ヶ月後のGate 1レビューで改めて承認(今回は方向性の合意のみ)
  4. 次のアクション: 承認翌週にキックオフ、2週間以内に外部パートナー選定完了、1ヶ月以内にPhase 1詳細計画策定

達成度チェック

観点達成基準
エグゼクティブサマリー6要素が1-2ページに収まり、これだけで判断できるレベル
ストーリーの一貫性背景→課題→提案→効果→リスク→承認の流れが論理的
数字の裏付けすべての数字に算出根拠がある
リスクの誠実性リスクが隠蔽されず、対策とセットで提示されている
承認事項の明確性何をいくらでいつまでに承認してほしいかが明確
ビジュアル主要データがチャートで可視化されている
読みやすさ技術用語が経営用語に翻訳されている

推定所要時間: 90分