ストーリー
ミッション概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演習タイトル | 技術投資のROI/TCO算出 |
| 想定時間 | 90分 |
| 成果物 | 投資提案書の財務分析パート(TCO + ROI + NPV/IRR + シナリオ分析) |
| 投資対象 | クラウド移行 + CI/CD整備(TechFlow社Phase 1) |
前提条件
TechFlow社の現在の状況(Step 1の続き)
会社概要:
売上: 年間30億円
開発部門: 100名(うちインフラチーム15名、QAチーム10名)
エンジニア人件費単価: 1,000万円/年(5,000円/時間)
現在のインフラ・運用コスト
| コスト項目 | 年間費用 | 備考 |
|---|---|---|
| サーバーハードウェア(償却) | 3,000万円 | 3年償却、毎年更新 |
| データセンター費用 | 1,800万円 | ラック代、電気代、ネットワーク |
| ライセンス費(OS、DB、監視) | 1,200万円 | Oracle DB、VMware等 |
| インフラ運用人件費 | 1億5,000万円 | 15名 × 1,000万円 |
| 外注保守費用 | 2,000万円 | ネットワーク保守、ハード保守 |
| 合計 | 2億3,000万円 |
現在の開発プロセスのコスト
| コスト項目 | 年間費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 手動テスト工数 | 5,000万円 | QAチーム10名 × 50% |
| 手動デプロイ工数 | 2,500万円 | 開発者50名 × 週3時間 × 50週 × 5,000円 |
| 障害対応工数 | 3,000万円 | 月3件 × 復旧20時間 × 5名 × 5,000円 |
| リリース待ち機会損失 | 5,000万円 | 月1回リリース→機能提供遅延による推定損失 |
| 合計 | 1億5,500万円 |
投資計画の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投資内容 | AWSへのクラウド移行 + CI/CDパイプライン構築 |
| 実施期間 | 18ヶ月(Phase 1: 6ヶ月、Phase 2: 12ヶ月) |
| 割引率 | 12%(TechFlow社のハードルレート) |
Mission 1: TCO算出(3年間)
要件
クラウド移行 + CI/CD整備の3年間TCOを5層モデルで算出してください。
- 5層(初期投資、運用、変更、間接、廃棄)のコスト内訳
- 年度別のコスト推移
- 現状維持の場合の3年間コストとの比較
- 感度分析(最も影響の大きい変数の特定)
解答例
投資案のTCO:
| コスト項目 | Year 1 | Year 2 | Year 3 | 3年合計 |
|---|---|---|---|---|
| 初期投資 | ||||
| AWS環境構築 | 2,000万円 | - | - | 2,000万円 |
| CI/CDパイプライン構築 | 1,500万円 | - | - | 1,500万円 |
| データ移行 | 1,000万円 | - | - | 1,000万円 |
| トレーニング | 500万円 | 200万円 | - | 700万円 |
| 運用コスト | ||||
| AWS利用料 | 2,400万円 | 3,600万円 | 3,800万円 | 9,800万円 |
| SaaSライセンス(CI/CD、監視) | 600万円 | 600万円 | 600万円 | 1,800万円 |
| 運用人件費(10名に削減) | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 3億円 |
| 変更コスト | ||||
| スケーリング対応 | - | 300万円 | 300万円 | 600万円 |
| アップグレード | - | 200万円 | 200万円 | 400万円 |
| 間接コスト | ||||
| 並行運用(6ヶ月) | 1,500万円 | - | - | 1,500万円 |
| 学習曲線による生産性低下 | 800万円 | - | - | 800万円 |
| 合計 | 2億300万円 | 1億4,900万円 | 1億4,900万円 | 5億100万円 |
現状維持のTCO:
| コスト項目 | Year 1 | Year 2 | Year 3 | 3年合計 |
|---|---|---|---|---|
| インフラ・運用コスト | 2億3,000万円 | 2億3,500万円 | 2億4,000万円 | 7億500万円 |
| 開発プロセスコスト | 1億5,500万円 | 1億6,000万円 | 1億6,500万円 | 4億8,000万円 |
| 合計 | 3億8,500万円 | 3億9,500万円 | 4億500万円 | 11億8,500万円 |
3年間の差額: 11億8,500万円 - 5億100万円 = 6億8,400万円の削減
Mission 2: ROI/NPV/IRR算出
要件
- 効果を4分類(直接コスト削減、生産性向上、売上貢献、リスク回避)で算出
- 3年間のキャッシュフロー表を作成
- ROI、NPV(割引率12%)、IRR、回収期間を算出
- リスク調整ROIを算出
解答例
効果の算出:
| 効果カテゴリ | 算出根拠 | 年間効果(Year 2以降) |
|---|---|---|
| 直接コスト削減 | インフラ費 6,000万円 + 運用人件費 5,000万円削減 | 1億1,000万円 |
| 生産性向上 | テスト自動化 4,000万円 + デプロイ自動化 2,000万円 | 6,000万円 |
| 売上貢献 | リリース速度向上によるチャーン改善(保守的50%) | 2,500万円 |
| リスク回避 | 障害削減 2,000万円 | 2,000万円 |
| 効果合計 | 2億1,500万円 |
キャッシュフロー表:
| 年 | 投資額 | 効果 | ネットCF | 割引率12% | 現在価値 |
|---|---|---|---|---|---|
| Year 0 | -5,000万円 | 0 | -5,000万円 | 1.000 | -5,000万円 |
| Year 1 | -1億5,300万円 | 8,000万円 | -7,300万円 | 0.893 | -6,517万円 |
| Year 2 | -1億4,900万円 | 2億1,500万円 | 6,600万円 | 0.797 | 5,260万円 |
| Year 3 | -1億4,900万円 | 2億1,500万円 | 6,600万円 | 0.712 | 4,699万円 |
財務指標:
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 3年間ROI | (2億1,200万円 - 5億100万円 + 5億1,000万円) / 5億100万円 = 投資額に対して42% |
| NPV(割引率12%) | -5,000 + (-6,517) + 5,260 + 4,699 = -1,558万円 … |
※ 注: 初年度の大型投資のため、3年では回収が厳しい可能性があります。5年で再計算すると:
| Year 4 | 1億4,900万円運用 | 2億1,500万円 | 6,600万円 | 0.636 | 4,198万円 | | Year 5 | 1億4,900万円運用 | 2億1,500万円 | 6,600万円 | 0.567 | 3,742万円 |
5年NPV: +6,382万円 IRR: 約16% 回収期間: 約2.8年(割引なし)、3.4年(割引あり)
リスク調整ROI:
- 技術成熟度: 高(0.85)
- 組織変革度: 中(0.70)
- データ精度: 中(0.75)
- 総合係数: 0.85 × 0.70 × 0.75 = 0.45
- リスク調整後5年ROI: 42% × 0.45 = 19%
Mission 3: シナリオ分析と投資判断
要件
- 楽観・基本・悲観の3シナリオでNPV/IRRを算出
- 感度分析で最も影響の大きい変数を特定
- 投資判断の推奨と根拠を記述
- リスク緩和策を含めた提案
解答例
シナリオ分析:
| シナリオ | 前提 | 5年NPV | IRR | 回収期間 |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 効果120%、コスト90% | 1億2,000万円 | 22% | 2.2年 |
| 基本 | 計画通り | 6,382万円 | 16% | 2.8年 |
| 悲観 | 効果60%、コスト130% | -3,500万円 | 8% | 4.5年 |
感度分析:
最も影響が大きい変数は「インフラ運用人員の削減幅」。15名→10名の想定を15名→12名に変更すると、NPVが3,000万円低下。
投資判断の推奨:
「基本シナリオでNPV 6,382万円、IRR 16%(ハードルレート12%超)であり、投資を推奨します。悲観シナリオではNPVがマイナスとなりますが、Phase 1(6ヶ月)終了時のゲートレビューで効果実績を確認し、Phase 2の続行判断を行うことで、悲観シナリオのリスクを緩和できます。」
達成度チェック
| 観点 | 達成基準 |
|---|---|
| TCO算出 | 5層モデルで漏れなくコストを洗い出し、年度別に整理できている |
| 効果算出 | 4分類で算出根拠が明確に示されている |
| 財務指標 | ROI、NPV、IRR、回収期間が正確に算出されている |
| シナリオ分析 | 3シナリオで投資判断の堅牢性を検証できている |
| 投資判断 | 数字に基づく明確な推奨と、リスク緩和策が示されている |
| 前提条件 | すべての仮定が明記されている |
推定所要時間: 90分