EXERCISE 90分

ストーリー

田中VPoE
ROI、TCO、NPV、IRRの理論を学んだ。次は実際の投資提案に適用する演習だ
あなた
Step 1の演習で使ったTechFlow社のシナリオの続きですか?
田中VPoE
そうだ。DXロードマップのPhase 1として「クラウド移行 + CI/CD整備」を提案することになった。CFOに提出する投資提案書の財務分析パートを作成してもらう
あなた
具体的な数字を算出して、CFOを説得できるレベルの分析を行います
田中VPoE
CFOは数字に厳しい。「なぜこの数字なのか」を根拠付きで説明できなければ、一発で信頼を失う。前提条件を明示し、算出根拠を丁寧に示してくれ

ミッション概要

項目内容
演習タイトル技術投資のROI/TCO算出
想定時間90分
成果物投資提案書の財務分析パート(TCO + ROI + NPV/IRR + シナリオ分析)
投資対象クラウド移行 + CI/CD整備(TechFlow社Phase 1)

前提条件

TechFlow社の現在の状況(Step 1の続き)

会社概要:
  売上: 年間30億円
  開発部門: 100名(うちインフラチーム15名、QAチーム10名)
  エンジニア人件費単価: 1,000万円/年(5,000円/時間)

現在のインフラ・運用コスト

コスト項目年間費用備考
サーバーハードウェア(償却)3,000万円3年償却、毎年更新
データセンター費用1,800万円ラック代、電気代、ネットワーク
ライセンス費(OS、DB、監視)1,200万円Oracle DB、VMware等
インフラ運用人件費1億5,000万円15名 × 1,000万円
外注保守費用2,000万円ネットワーク保守、ハード保守
合計2億3,000万円

現在の開発プロセスのコスト

コスト項目年間費用備考
手動テスト工数5,000万円QAチーム10名 × 50%
手動デプロイ工数2,500万円開発者50名 × 週3時間 × 50週 × 5,000円
障害対応工数3,000万円月3件 × 復旧20時間 × 5名 × 5,000円
リリース待ち機会損失5,000万円月1回リリース→機能提供遅延による推定損失
合計1億5,500万円

投資計画の概要

項目内容
投資内容AWSへのクラウド移行 + CI/CDパイプライン構築
実施期間18ヶ月(Phase 1: 6ヶ月、Phase 2: 12ヶ月)
割引率12%(TechFlow社のハードルレート)

Mission 1: TCO算出(3年間)

要件

クラウド移行 + CI/CD整備の3年間TCOを5層モデルで算出してください。

  1. 5層(初期投資、運用、変更、間接、廃棄)のコスト内訳
  2. 年度別のコスト推移
  3. 現状維持の場合の3年間コストとの比較
  4. 感度分析(最も影響の大きい変数の特定)
解答例

投資案のTCO:

コスト項目Year 1Year 2Year 33年合計
初期投資
AWS環境構築2,000万円--2,000万円
CI/CDパイプライン構築1,500万円--1,500万円
データ移行1,000万円--1,000万円
トレーニング500万円200万円-700万円
運用コスト
AWS利用料2,400万円3,600万円3,800万円9,800万円
SaaSライセンス(CI/CD、監視)600万円600万円600万円1,800万円
運用人件費(10名に削減)1億円1億円1億円3億円
変更コスト
スケーリング対応-300万円300万円600万円
アップグレード-200万円200万円400万円
間接コスト
並行運用(6ヶ月)1,500万円--1,500万円
学習曲線による生産性低下800万円--800万円
合計2億300万円1億4,900万円1億4,900万円5億100万円

現状維持のTCO:

コスト項目Year 1Year 2Year 33年合計
インフラ・運用コスト2億3,000万円2億3,500万円2億4,000万円7億500万円
開発プロセスコスト1億5,500万円1億6,000万円1億6,500万円4億8,000万円
合計3億8,500万円3億9,500万円4億500万円11億8,500万円

3年間の差額: 11億8,500万円 - 5億100万円 = 6億8,400万円の削減


Mission 2: ROI/NPV/IRR算出

要件

  1. 効果を4分類(直接コスト削減、生産性向上、売上貢献、リスク回避)で算出
  2. 3年間のキャッシュフロー表を作成
  3. ROI、NPV(割引率12%)、IRR、回収期間を算出
  4. リスク調整ROIを算出
解答例

効果の算出:

効果カテゴリ算出根拠年間効果(Year 2以降)
直接コスト削減インフラ費 6,000万円 + 運用人件費 5,000万円削減1億1,000万円
生産性向上テスト自動化 4,000万円 + デプロイ自動化 2,000万円6,000万円
売上貢献リリース速度向上によるチャーン改善(保守的50%)2,500万円
リスク回避障害削減 2,000万円2,000万円
効果合計2億1,500万円

キャッシュフロー表:

投資額効果ネットCF割引率12%現在価値
Year 0-5,000万円0-5,000万円1.000-5,000万円
Year 1-1億5,300万円8,000万円-7,300万円0.893-6,517万円
Year 2-1億4,900万円2億1,500万円6,600万円0.7975,260万円
Year 3-1億4,900万円2億1,500万円6,600万円0.7124,699万円

財務指標:

指標
3年間ROI(2億1,200万円 - 5億100万円 + 5億1,000万円) / 5億100万円 = 投資額に対して42%
NPV(割引率12%)-5,000 + (-6,517) + 5,260 + 4,699 = -1,558万円

※ 注: 初年度の大型投資のため、3年では回収が厳しい可能性があります。5年で再計算すると:

| Year 4 | 1億4,900万円運用 | 2億1,500万円 | 6,600万円 | 0.636 | 4,198万円 | | Year 5 | 1億4,900万円運用 | 2億1,500万円 | 6,600万円 | 0.567 | 3,742万円 |

5年NPV: +6,382万円 IRR: 約16% 回収期間: 約2.8年(割引なし)、3.4年(割引あり)

リスク調整ROI:

  • 技術成熟度: 高(0.85)
  • 組織変革度: 中(0.70)
  • データ精度: 中(0.75)
  • 総合係数: 0.85 × 0.70 × 0.75 = 0.45
  • リスク調整後5年ROI: 42% × 0.45 = 19%

Mission 3: シナリオ分析と投資判断

要件

  1. 楽観・基本・悲観の3シナリオでNPV/IRRを算出
  2. 感度分析で最も影響の大きい変数を特定
  3. 投資判断の推奨と根拠を記述
  4. リスク緩和策を含めた提案
解答例

シナリオ分析:

シナリオ前提5年NPVIRR回収期間
楽観効果120%、コスト90%1億2,000万円22%2.2年
基本計画通り6,382万円16%2.8年
悲観効果60%、コスト130%-3,500万円8%4.5年

感度分析:

最も影響が大きい変数は「インフラ運用人員の削減幅」。15名→10名の想定を15名→12名に変更すると、NPVが3,000万円低下。

投資判断の推奨:

「基本シナリオでNPV 6,382万円、IRR 16%(ハードルレート12%超)であり、投資を推奨します。悲観シナリオではNPVがマイナスとなりますが、Phase 1(6ヶ月)終了時のゲートレビューで効果実績を確認し、Phase 2の続行判断を行うことで、悲観シナリオのリスクを緩和できます。」


達成度チェック

観点達成基準
TCO算出5層モデルで漏れなくコストを洗い出し、年度別に整理できている
効果算出4分類で算出根拠が明確に示されている
財務指標ROI、NPV、IRR、回収期間が正確に算出されている
シナリオ分析3シナリオで投資判断の堅牢性を検証できている
投資判断数字に基づく明確な推奨と、リスク緩和策が示されている
前提条件すべての仮定が明記されている

推定所要時間: 90分