LESSON 30分

ストーリー

田中VPoE
配置先の判断基準を学んだ。次は実際にワークロードを移行するパターンだ。「6つのR」を知っているか?
あなた
Rehost、Replatform…AWSの移行戦略ですよね
田中VPoE
そうだ。ただしマルチクラウドの文脈では、クラウド間の移行という新しい次元が加わる。AWSからGCPへ、AWSからAzureへ — 同じRでもクラウド間移行ならではの考慮点がある
あなた
クラウドサービスの対応関係を理解しておく必要がありそうですね
田中VPoE
その通り。それに加えて、データ移行戦略と移行中のサービス継続(カットオーバー戦略)が特に重要になる

7つのRs移行戦略

概要

戦略説明コストリスク適用場面
Retain現在のクラウドに残すなしなしロックインが深い、移行メリットが少ない
Retire廃止する使われていない、重複している
Rehostそのまま移す(Lift & Shift)低〜中コンテナ化済み、VM間移行
Replatform少し変えて移す(Lift & Reshape)DB種別変更、マネージドサービス切替
Refactor作り直す(Re-architect)クラウドネイティブに最適化
RepurchaseSaaSに置き換える自前運用からSaaS移行
Relocateコンテナごと移すKubernetes間移行

マルチクラウド移行での適用

移行パターンの選択フロー:

ワークロード評価
├── コンテナ化済み?
│   ├── Yes → Relocate(K8s間移行)or Rehost
│   └── No  → コンテナ化の余地は?
│       ├── あり → Replatform(コンテナ化して移行)
│       └── なし → Refactor or Retain
├── クラウド固有サービスに依存?
│   ├── 低 → Rehost / Relocate
│   ├── 中 → Replatform
│   └── 高 → Refactor or Retain
└── 代替SaaSがある?
    ├── Yes → Repurchase検討
    └── No  → 上記フローで判断

クラウド間サービス対応表

コンピュート

機能AWSGCPAzure
VMEC2Compute EngineVirtual Machines
コンテナオーケストレーションECS/EKSGKEAKS
サーバーレスLambdaCloud Functions/RunAzure Functions
コンテナ実行FargateCloud RunContainer Instances

データベース

機能AWSGCPAzure
リレーショナルRDS/AuroraCloud SQL/AlloyDBAzure SQL/Database
NoSQL(ドキュメント)DynamoDBFirestoreCosmos DB
キャッシュElastiCacheMemorystoreAzure Cache
DWHRedshiftBigQuerySynapse Analytics

ストレージ・メッセージング

機能AWSGCPAzure
オブジェクトストレージS3Cloud StorageBlob Storage
メッセージキューSQSCloud Tasks/Pub/SubService Bus
イベント通知SNS/EventBridgePub/SubEvent Grid

データ移行戦略

移行パターン

パターン方法適用場面ダウンタイム
一括移行一度にすべてのデータを転送小〜中規模、計画停止が許容あり(数時間〜数日)
段階的移行データを段階的に移行大規模、長期運用最小限
同期レプリケーションリアルタイムでデータを複製ゼロダウンタイム要件なし
CDC(Change Data Capture)変更分のみを継続的に転送大規模DB、サービス継続なし〜最小限

データ量別の移行手段

データ量推奨手段所要時間の目安
〜100GBネットワーク転送(API/CLI)数時間
100GB〜10TB高帯域ネットワーク転送数日
10TB〜100TB専用線 + 圧縮転送数日〜数週間
100TB〜物理デバイス転送(Snowball等)数週間

カットオーバー戦略

3つの戦略

戦略説明リスク適用場面
ビッグバン一度にすべてを切り替え小規模、テストで十分検証済み
段階切替サービス/機能単位で段階的に切替大規模、リスク分散が必要
並行稼動新旧環境を同時稼動し段階的に移行ミッションクリティカルなサービス
段階切替の例:

Week 1-2:  バッチ処理を移行(影響小)
Week 3-4:  データ分析基盤を移行(非リアルタイム)
Week 5-8:  APIサービスの一部を移行(カナリア)
Week 9-12: 残りのAPIサービスを移行
Week 13:   旧環境の縮退・廃止

まとめ

ポイント内容
7つのRsRetain, Retire, Rehost, Replatform, Refactor, Repurchase, Relocate
サービス対応クラウド間のサービス対応を理解して移行先を決定
データ移行データ量と要件に応じた移行パターンを選択
カットオーバービッグバン、段階切替、並行稼動から選択

チェックリスト

  • 7つのRs移行戦略を理解し、適切に選択できる
  • 主要クラウドのサービス対応関係を把握した
  • データ移行のパターンと手段を理解した
  • カットオーバー戦略の選択基準を理解した

次のステップへ

次は「抽象化レイヤーの設計」を学びます。マルチクラウド環境で共通のインターフェースを提供する抽象化レイヤーの設計方法を身につけましょう。


推定読了時間: 30分