LESSON 30分

ストーリー

田中VPoE
目標アーキテクチャが設計できた。次は「現状から目標にどう移行するか」だ。ここが一番難しい
あなた
設計図を描くのと、実際に建て替えるのは全く別の話ですよね
田中VPoE
まさにそうだ。しかもうちの場合、事業は稼働中だ。営業支援プラットフォームを止めるわけにはいかない。走りながらエンジンを載せ替える — それが技術基盤刷新の本質だ
あなた
Month 5のクラウド移行でもそういった話がありました
田中VPoE
そうだ。Month 5のクラウド移行戦略を組織全体に拡張する。6Rパターン、ストラングラーフィグ、ブルーグリーン — 個別のパターンをどう組み合わせるかが腕の見せどころだ

移行戦略の全体フレームワーク

3つの移行アプローチ

アプローチ概要適するケースリスク期間
ビッグバン旧システムを一括で新システムに置き換え小規模、独立したシステム極めて高い短い
段階的移行機能単位で順次移行大規模、事業継続が必要中程度中〜長い
並行運用新旧システムを並行稼働し段階的に切り替えミッションクリティカル低い(コスト高)長い

組織全体の移行戦略マトリクス

リスク許容度
  低  │  並行運用        段階的移行
      │  (新旧並行)      (機能単位)

  中  │  段階的移行      段階的移行
      │  (慎重)         (積極)

  高  │  段階的移行      ビッグバン
      │  (積極)         (小規模のみ)

      └──────────────────────────
         大              小
              システム規模

「技術基盤の全面刷新は、組織として最も複雑なプロジェクトの一つだ。ビッグバンは論外。段階的移行を基本戦略とし、領域ごとに最適なパターンを選択する」 — 田中VPoE


7領域の移行パターン

領域別の推奨移行パターン

領域推奨パターン理由移行期間
CI/CD段階的移行(チーム単位)各チームのパイプラインを順次GitHub Actionsに移行12ヶ月
SRE/信頼性段階的移行(サービス単位)監視ツール統合とSLO定義を順次拡大12ヶ月
AI基盤並行構築 → 移行新規MLOps基盤を構築し、既存AIシステムを移行18ヶ月
セキュリティハイブリッドゼロトラストを並行構築しつつ、既存セキュリティも強化24ヶ月
クラウド段階的移行(6Rパターン)EC2→EKS移行をサービス単位で実施18ヶ月
IDP並行構築 → 段階的採用Backstageを構築し、チーム単位で採用を拡大18ヶ月
データハイブリッド既存DWH改善とリアルタイム基盤の並行構築24ヶ月

6Rパターンの活用(Month 5の知見)

パターン概要適用例
Rehostそのままクラウドに移すEC2→EC2(別VPC)。最速だが最適化なし
Replatform一部をクラウドサービスに置き換えEC2→ECS/Fargate。コンテナ化のみ
Refactorアーキテクチャを変更モノリス→マイクロサービス
RepurchaseSaaSに置き換え自前監視→Datadog
Retire廃止使われていないサービスの停止
Retain現状維持移行コストが効果を上回る場合

移行の依存関係と順序

クリティカルパス分析

Phase 0(基盤整備): 0-3ヶ月
  ├── セキュリティ基盤の基礎整備(認証統合、SSO)
  └── オブザーバビリティの基礎統一(Datadog全面導入)

Phase 1(コア基盤): 3-12ヶ月
  ├── CI/CD統一(GitHub Actions移行)
  │   └── 依存: セキュリティスキャン統合
  ├── クラウド最適化(IaC拡大、コンテナ化開始)
  │   └── 依存: セキュリティ基盤、オブザーバビリティ
  └── データ基盤強化(品質管理、カタログ整備)

Phase 2(プラットフォーム層): 12-24ヶ月
  ├── IDP構築・展開(Backstage)
  │   └── 依存: CI/CD統一
  ├── ゼロトラスト実装
  │   └── 依存: クラウド基盤、認証基盤
  └── SLI/SLO全サービス展開
      └── 依存: オブザーバビリティ統合

Phase 3(高度化): 24-36ヶ月
  ├── AI/ML基盤構築
  │   └── 依存: データ基盤
  ├── データメッシュ/リアルタイム処理
  │   └── 依存: データ基盤強化
  └── プラットフォーム自動最適化
      └── 依存: IDP、AI/ML基盤

移行の判断基準

判断項目Go条件No-Go条件
前提基盤依存する基盤のPhaseが完了前提基盤が未整備
チーム準備担当チームがトレーニング完了スキルギャップが大きい
テスト移行テストが合格テスト未実施またはFailure
ロールバックロールバック手順が検証済みロールバック手順なし
ステークホルダー関係者の合意が得られている主要ステークホルダーが反対

移行中の運用モデル

新旧並行期間の管理

parallel_operation_model:
  principles:
    - "旧システムの品質を維持しながら移行を進める"
    - "ユーザー影響を最小化する"
    - "ロールバック可能な状態を常に維持する"

  monitoring:
    old_system:
      - "既存のアラートとダッシュボードを維持"
      - "パフォーマンスベースラインを記録"
    new_system:
      - "新基盤の監視を最初から設定"
      - "旧システムとの比較メトリクスを追跡"

  cutover_criteria:
    - "新システムが旧システムと同等以上のパフォーマンス"
    - "7日間の安定稼働実績"
    - "主要なエッジケースのテスト完了"
    - "ロールバック手順の検証完了"

まとめ

ポイント内容
3つのアプローチビッグバン/段階的/並行の中から領域ごとに選択
6Rパターンクラウド移行の6つのパターンを組み合わせて適用
クリティカルパスセキュリティ → クラウド → CI/CD → IDP → データ → AI の順序
Go/No-Go基準前提基盤、チーム準備、テスト、ロールバック、合意の5条件
並行運用新旧システムの並行期間を計画的に管理し、品質を維持

チェックリスト

  • 3つの移行アプローチの使い分けを理解した
  • 7領域の推奨移行パターンを把握した
  • 依存関係を考慮したクリティカルパスを理解した
  • Go/No-Go判断基準を把握した

次のステップへ

次は「ストラングラーフィグパターン」を学びます。段階的移行の中核となるパターンで、レガシーシステムを安全に置き換える手法を深掘りしましょう。


推定読了時間: 30分