ストーリー
田
田中VPoE
目標アーキテクチャが設計できた。次は「現状から目標にどう移行するか」だ。ここが一番難しい
あなた
設計図を描くのと、実際に建て替えるのは全く別の話ですよね
あ
田
田中VPoE
まさにそうだ。しかもうちの場合、事業は稼働中だ。営業支援プラットフォームを止めるわけにはいかない。走りながらエンジンを載せ替える — それが技術基盤刷新の本質だ
あなた
Month 5のクラウド移行でもそういった話がありました
あ
田
田中VPoE
そうだ。Month 5のクラウド移行戦略を組織全体に拡張する。6Rパターン、ストラングラーフィグ、ブルーグリーン — 個別のパターンをどう組み合わせるかが腕の見せどころだ
移行戦略の全体フレームワーク
3つの移行アプローチ
| アプローチ | 概要 | 適するケース | リスク | 期間 |
|---|
| ビッグバン | 旧システムを一括で新システムに置き換え | 小規模、独立したシステム | 極めて高い | 短い |
| 段階的移行 | 機能単位で順次移行 | 大規模、事業継続が必要 | 中程度 | 中〜長い |
| 並行運用 | 新旧システムを並行稼働し段階的に切り替え | ミッションクリティカル | 低い(コスト高) | 長い |
組織全体の移行戦略マトリクス
リスク許容度
低 │ 並行運用 段階的移行
│ (新旧並行) (機能単位)
│
中 │ 段階的移行 段階的移行
│ (慎重) (積極)
│
高 │ 段階的移行 ビッグバン
│ (積極) (小規模のみ)
│
└──────────────────────────
大 小
システム規模
「技術基盤の全面刷新は、組織として最も複雑なプロジェクトの一つだ。ビッグバンは論外。段階的移行を基本戦略とし、領域ごとに最適なパターンを選択する」 — 田中VPoE
7領域の移行パターン
領域別の推奨移行パターン
| 領域 | 推奨パターン | 理由 | 移行期間 |
|---|
| CI/CD | 段階的移行(チーム単位) | 各チームのパイプラインを順次GitHub Actionsに移行 | 12ヶ月 |
| SRE/信頼性 | 段階的移行(サービス単位) | 監視ツール統合とSLO定義を順次拡大 | 12ヶ月 |
| AI基盤 | 並行構築 → 移行 | 新規MLOps基盤を構築し、既存AIシステムを移行 | 18ヶ月 |
| セキュリティ | ハイブリッド | ゼロトラストを並行構築しつつ、既存セキュリティも強化 | 24ヶ月 |
| クラウド | 段階的移行(6Rパターン) | EC2→EKS移行をサービス単位で実施 | 18ヶ月 |
| IDP | 並行構築 → 段階的採用 | Backstageを構築し、チーム単位で採用を拡大 | 18ヶ月 |
| データ | ハイブリッド | 既存DWH改善とリアルタイム基盤の並行構築 | 24ヶ月 |
6Rパターンの活用(Month 5の知見)
| パターン | 概要 | 適用例 |
|---|
| Rehost | そのままクラウドに移す | EC2→EC2(別VPC)。最速だが最適化なし |
| Replatform | 一部をクラウドサービスに置き換え | EC2→ECS/Fargate。コンテナ化のみ |
| Refactor | アーキテクチャを変更 | モノリス→マイクロサービス |
| Repurchase | SaaSに置き換え | 自前監視→Datadog |
| Retire | 廃止 | 使われていないサービスの停止 |
| Retain | 現状維持 | 移行コストが効果を上回る場合 |
移行の依存関係と順序
クリティカルパス分析
Phase 0(基盤整備): 0-3ヶ月
├── セキュリティ基盤の基礎整備(認証統合、SSO)
└── オブザーバビリティの基礎統一(Datadog全面導入)
Phase 1(コア基盤): 3-12ヶ月
├── CI/CD統一(GitHub Actions移行)
│ └── 依存: セキュリティスキャン統合
├── クラウド最適化(IaC拡大、コンテナ化開始)
│ └── 依存: セキュリティ基盤、オブザーバビリティ
└── データ基盤強化(品質管理、カタログ整備)
Phase 2(プラットフォーム層): 12-24ヶ月
├── IDP構築・展開(Backstage)
│ └── 依存: CI/CD統一
├── ゼロトラスト実装
│ └── 依存: クラウド基盤、認証基盤
└── SLI/SLO全サービス展開
└── 依存: オブザーバビリティ統合
Phase 3(高度化): 24-36ヶ月
├── AI/ML基盤構築
│ └── 依存: データ基盤
├── データメッシュ/リアルタイム処理
│ └── 依存: データ基盤強化
└── プラットフォーム自動最適化
└── 依存: IDP、AI/ML基盤
移行の判断基準
| 判断項目 | Go条件 | No-Go条件 |
|---|
| 前提基盤 | 依存する基盤のPhaseが完了 | 前提基盤が未整備 |
| チーム準備 | 担当チームがトレーニング完了 | スキルギャップが大きい |
| テスト | 移行テストが合格 | テスト未実施またはFailure |
| ロールバック | ロールバック手順が検証済み | ロールバック手順なし |
| ステークホルダー | 関係者の合意が得られている | 主要ステークホルダーが反対 |
移行中の運用モデル
新旧並行期間の管理
parallel_operation_model:
principles:
- "旧システムの品質を維持しながら移行を進める"
- "ユーザー影響を最小化する"
- "ロールバック可能な状態を常に維持する"
monitoring:
old_system:
- "既存のアラートとダッシュボードを維持"
- "パフォーマンスベースラインを記録"
new_system:
- "新基盤の監視を最初から設定"
- "旧システムとの比較メトリクスを追跡"
cutover_criteria:
- "新システムが旧システムと同等以上のパフォーマンス"
- "7日間の安定稼働実績"
- "主要なエッジケースのテスト完了"
- "ロールバック手順の検証完了"
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|
| 3つのアプローチ | ビッグバン/段階的/並行の中から領域ごとに選択 |
| 6Rパターン | クラウド移行の6つのパターンを組み合わせて適用 |
| クリティカルパス | セキュリティ → クラウド → CI/CD → IDP → データ → AI の順序 |
| Go/No-Go基準 | 前提基盤、チーム準備、テスト、ロールバック、合意の5条件 |
| 並行運用 | 新旧システムの並行期間を計画的に管理し、品質を維持 |
チェックリスト
次のステップへ
次は「ストラングラーフィグパターン」を学びます。段階的移行の中核となるパターンで、レガシーシステムを安全に置き換える手法を深掘りしましょう。
推定読了時間: 30分