演習:困難なプロジェクトシミュレーション
ストーリー
「いよいよ実践だ。困難なプロジェクトのシミュレーションをやろう」
渡辺マネージャーが複雑なシナリオを用意した。
「計画通りには進まない。問題が次々と起きる。 その中で、ここまで学んだ全てのスキルを使って プロジェクトを完遂させてくれ」
演習の概要
仮想プロジェクト「ECサイト コンビニ決済機能追加」のリーダーとして、プロジェクト計画の作成からリスク対応、ステークホルダー管理、振り返りまでを一通り実施してください。
課題1: プロジェクト計画書の作成
以下の情報をもとに、プロジェクト計画書を作成してください。
プロジェクト情報
- 期間: 8週間(3月3日〜4月25日)
- チーム: 4名(あなた、田中、鈴木、佐藤(リモート・50%稼働))
- 目標: コンビニ決済(ローソン、ファミマ、セブン)をECサイトに追加
- 外部依存: 決済代行サービスA社のAPI
- 制約: セキュリティ審査が必要(リリース2週間前に提出)
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# プロジェクト計画書 - コンビニ決済機能追加
## ゴール(SMART)
4月25日までに、主要コンビニ3社(ローソン、ファミマ、セブン)の
決済機能をECサイトに追加し、決済完了率95%以上を達成する。
## スコープ
### やること
- コンビニ決済のAPI連携(A社決済代行サービス経由)
- 決済画面のUI実装(バーコード表示)
- 決済ステータス管理(Webhook受信)
- 管理画面での決済一覧表示
- セキュリティ審査対応
### やらないこと
- モバイルアプリ対応
- コンビニ3社以外の対応
- 既存クレジットカード決済の改修
## マイルストーン
| M# | マイルストーン | 日付 | 成果物 |
|----|-------------|------|--------|
| M1 | 設計完了 | 3/14 | 設計書、API仕様書 |
| M2 | API連携完了 | 3/28 | 決済APIクライアント |
| M3 | 全機能実装完了 | 4/11 | 全機能統合 |
| M4 | セキュリティ審査提出 | 4/11 | 審査書類 |
| M5 | テスト完了 | 4/18 | テスト報告書 |
| M6 | 本番リリース | 4/25 | リリース |
## リソース配分
| メンバー | 担当 | 稼働率 |
|---------|------|--------|
| あなた | バックエンドAPI、全体リード | 100% |
| 田中 | フロントエンド、UI | 100% |
| 鈴木 | テスト、ドキュメント | 80% |
| 佐藤 | 外部API連携、セキュリティ | 50% |
## リスク管理表
| リスク | 確率 | 影響 | 対策 |
|--------|------|------|------|
| A社API仕様変更 | 中 | 高 | 抽象化レイヤーで変更を吸収 |
| セキュリティ審査不合格 | 低 | 高 | 設計段階で事前レビュー |
| 佐藤さんの稼働不足 | 高 | 中 | 佐藤さん担当を前倒しで完了 |
| 見積もり超過 | 中 | 中 | 各フェーズに20%バッファ |
## コミュニケーション計画
| 対象 | 頻度 | 方法 |
|------|------|------|
| チーム | 毎日 | デイリースタンドアップ |
| PO | 週次 | 進捗報告ミーティング |
| A社 | 隔週 | 技術打ち合わせ |
| セキュリティチーム | M1, M4時 | レビューミーティング |課題2: トラブル対応シミュレーション
プロジェクト進行中に以下の3つのトラブルが発生しました。それぞれへの対応を作成してください。
トラブル1: Week 3 - A社のAPI仕様が大幅変更
A社から「APIバージョンアップにより、認証方式がOAuth1.0からOAuth2.0に変更」との連絡。既存の実装を修正する必要があり、3日の追加工数が見込まれる。
トラブル2: Week 5 - 鈴木さんがインフルエンザで1週間休み
テスト計画を担当していた鈴木さんが1週間離脱。テストフェーズの開始が迫っている。
トラブル3: Week 6 - POからスコープ追加依頼
POから「PayPay対応も追加してほしい。経営からの要請だ」との依頼。
<details> <summary>解答例(自分で実装してから確認しよう)</summary>トラブル1への対応
【渡辺マネージャーへの報告(STAR法)】
S: A社からAPI認証方式の変更(OAuth1.0→2.0)の連絡がありました。
T: 修正に3日かかり、M2(API連携完了 3/28)が3/31にずれます。
バッファ内で吸収可能ですが、バッファの60%を消費します。
A: 対 応方針:
- 佐藤さんと協力してOAuth2.0対応を最優先で実施
- 認証ライブラリを抽象化し、今後の変更に備える
- A社との定例を週次に変更し、追加変更を早期キャッチ
R: M2の3日遅延を承認いただきたい。
M3以降への影響は最小限に抑えます。
トラブル2への対応
【対応計画】
1. 即時対応:
- 鈴木さんの担当タスクを確認・整理
- テスト計画書のドラフトはあなたが引き継ぐ
- テストケースの作成は田中さんが一部分担
2. スケジュール調整:
- テストフェーズ開始を2日後ろ倒し
- 鈴木さん復帰後に集中的にテスト実施
- バッファの残りで吸収(限界ギリギリ)
3. リスク軽減:
- 実装フェーズ中に開発者テストを厚めに実施
- 自動テストの比率を上げ、手動テストの負荷を減らす
4. 鈴木さんへのフォロー:
- 復帰後のキャッチアップ用に状況メモを更新
- 無理をしないよう配慮
トラブル3への対応
【POへの回答】
「PayPay対応のご要望、承知しました。
影響を分析させてください。
分析結果:
- PayPay対応に追加2週間の工数が必要
- 現在のスケジュールに含めると、リリースが5/9に延期
選択肢を3つ用意しました:
A案: リリースを5/9に延期し、PayPayを含める
メリット: 一度に全決済手段をリリース
デメリット: 2週間の遅延
B案: 4/25にコンビニ決済をリリースし、PayPayは5/16にフェーズ2リリース
メリット: コンビニ決済は予定通り
デメリット: リリースが2回に分かれる
C案: コンビニ決済のうち1社を削除し、PayPayを代わりに追加
メリット: スケジュール維持
デメリット: 当初スコープの一部が欠ける
推奨はB案です。コンビニ決済を予定通りリリースすることで、
ステークホルダーの信頼を維持しつつ、PayPayも確実に提供できます。
判断をお願いします。」
</details>
課題3: スプリント振り返り(KPT)の実施
プロジェクトの4週目(折り返し地点)で、チーム振り返りを実施します。以下の状況を踏まえて、KPTを作成してください。
4週目の状況
- M1(設計完了)は1日遅れで完了
- M2(API連携完了)は3日遅れ(A社変更の影響)
- PRレビューSLAは85%達成
- デイリースタンドアップは平均14分
- リモートの佐藤さんから「情報共有が改善された」とフィードバック
- テスト環境が2回ダウンした
markdown
# Sprint 2 振り返り(KPT)
## Keep(続けること)
- デイリースタンドアップが15分以内に収まっている(平均14分)
- #decisions チャンネルの運用が定着(佐藤さんからのフィードバックが改善)
- PRレビューSLA 85%達成(目標90%にはもう少し)
- 外部API変更にチームが迅速に対応できた
## Problem(問題だったこと)
- A社のAPI変更で3日遅延。バッファの60%を消費済み
- テスト環境が2回ダウンし、計4時間のロス
- M1の遅延(設計レビューのフィードバックループが長かった)
- 佐藤さんの稼働が想定50%だが実際は40%程度
## Try(次のスプリントで試すこと)
1. テスト環境をDocker化して安定性を向上 [田中] 今週中
2. 設計レビューは非同期(PR形式)で実施し、リードタイムを短縮 [あなた] 即日
3. 佐藤さんの担当タスクを前倒しで完了させるため、
今週中に佐藤さんの残タスクを集中消化 [佐藤 + あなた] 今週中
## 前回のTry確認
(初回のため該当なし)
## アクションアイテム
| 担当 | アクション | 期限 |
|------|-----------|------|
| 田中 | テスト環境Docker化 | 今週金曜 |
| あなた | 設計レビューのPR化ルール策定 | 明日 |
| あなた + 佐藤 | 外部API連携の残タスク消化 | 今週金曜 |達成度チェック
| 課題 | 内容 | 完了 |
|---|---|---|
| 課題1 | プロジェクト計画書の作成 | [ ] |
| 課題2 | 3つのトラブルへの対応 | [ ] |
| 課題3 | スプリント振り返り(KPT) | [ ] |
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| プロジェクト計画 | SMART目標、スコープ、WBS、マイルストーン、リスク |
| トラブル対応 | STAR法で報告、選択肢を提示、トレードオフを明示 |
| 振り返り | KPTで具体的なTryを3つまで設定 |
| 全体を通して | タスク管理、報告、コミュニケーションの総合力 |
チェックリスト
- プロジェクト計画書を体系的に作成できた
- 3つのトラブルに対して適切な対応を考えられた
- KPTで具体的な改善アクションを設定できた
- ステークホルダーへの報告を適切に作成できた
次のステップへ
演習が完了したら、Step 5のチェックポイントクイズに挑戦しましょう。
推定所要時間: 90分