LESSON 30分

ステークホルダー管理

ストーリー

「プロジェクト計画を立てたら、次は関係者の期待を管理する必要がある」

渡辺マネージャーが続けた。

「技術的に完璧でも、ステークホルダーの期待と ずれていたら『失敗プロジェクト』になる。 逆に、多少の遅延があっても、適切にコミュニケーションしていれば 信頼は守られる。期待をコントロールする技術を学ぼう」


ステークホルダーとは

プロジェクトに利害関係を持つ全ての人をステークホルダーと呼びます。

ステークホルダーの特定

コンビニ決済機能追加プロジェクトのステークホルダー:

  社内:
    ├─ 経営層(CTO、事業部長)
    ├─ プロダクトオーナー(PO)
    ├─ 開発チーム
    ├─ QAチーム
    ├─ デザインチーム
    ├─ カスタマーサポート
    ├─ 営業チーム
    └─ セキュリティチーム

  社外:
    ├─ 決済代行サービス(外部ベンダー)
    └─ エンドユーザー

ステークホルダーマッピング

影響力 x 関心度マトリクス

            関心度 高
              │
    ┌─────────┼─────────┐
    │ 満足を   │ 密に     │
    │ 維持     │ 管理     │
影  │         │          │
響  │ セキュリティ│ PO      │
力  │ チーム    │ CTO     │
高──┼─────────┼─────────┤
    │ 監視     │ 情報     │
    │ のみ     │ 提供     │
    │         │          │
    │ エンド    │ 営業チーム │
    │ ユーザー  │ CS チーム │
    └─────────┼─────────┘
            関心度 低

各象限への対応方針

象限対応方針コミュニケーション頻度
密に管理(高影響×高関心)定期的に詳細な報告、意思決定に参加してもらう週次以上
満足を維持(高影響×低関心)大きな決定時に報告、変更時に確認マイルストーン時
情報提供(低影響×高関心)定期的に進捗を共有隔週
監視のみ(低影響×低関心)必要時のみ連絡リリース時

期待のマネジメント

期待値を合わせる

プロジェクト開始時にステークホルダーの期待を把握し、現実と合わせることが重要です。

期待値のずれが起きるパターン:

PO の期待: 「全コンビニ10社対応 + モバイルアプリ対応」
実際のスコープ: 「主要3社 + Web版のみ」

→ 開始時に期待値を合わせないと、
  リリース時に「思ってたのと違う」と言われる

期待値を合わせるフレームワーク

ステップ内容具体例
1. ヒアリング相手の期待を聴く「この機能に何を期待していますか?」
2. 現実の提示制約条件を伝える「2ヶ月では主要3社対応が現実的です」
3. 合意形成優先順位を決める「まず3社対応、残りはフェーズ2で」
4. 文書化合意内容を記録スコープドキュメントに明記
5. 定期確認期待値がずれていないか確認隔週のミーティングで確認

ステークホルダーへの報告の使い分け

報告レベルの設計

経営層(CTO):
  頻度: 月次 or マイルストーン時
  内容: エグゼクティブサマリー(3行)
  形式: メール or 1スライド
  例: 「コンビニ決済PJは予定通り進行中。
      4/30リリースに変更なし。
      リスク: 外部API連携のテスト遅延の可能性(対策済み)」

PO:
  頻度: 週次
  内容: 機能の進捗、デモ、判断が必要な事項
  形式: ミーティング + 進捗報告書
  例: バーンダウンチャート、完了機能のデモ、優先順位の相談

開発チーム:
  頻度: 毎日
  内容: 技術的な詳細、ブロッカー、依存関係
  形式: デイリースタンドアップ + Slack

変更管理

スコープ変更の依頼が来た時

PO: 「やっぱりQRコード決済も追加してほしい」

NG対応:
  「わかりました」(安請け合い)
  「無理です」(拒否)

OK対応:
  1. 要望を正確に理解する
     「QRコード決済とは具体的にどの方式ですか?」

  2. 影響を分析する
     「追加に2週間の工数が必要です。
      現在のスコープを維持する場合、リリースが2週間遅れます」

  3. 選択肢を提示する
     「A案: リリースを5/14に延期してQRコードを含める
      B案: 4/30にコンビニ決済をリリースし、QRコードはフェーズ2
      C案: モバイルアプリ対応を削除してQRコードを追加」

  4. 判断を仰ぐ
     「どの案で進めるか決めていただけますか?」

変更管理のルール

ルール内容
変更は文書化する口頭の依頼は記録に残す
影響を分析するスケジュール、コスト、品質への影響
トレードオフを明示する追加するなら何を削るか
承認プロセスを経る誰が承認するかを決めておく

信頼関係の構築

ステークホルダーとの信頼を築く行動

行動効果
約束を守る「あの人に任せれば大丈夫」
悪いニュースを早く伝える「正直な人だ。信頼できる」
定期的に報告する「状況が把握できて安心」
相手の立場で考える「自分たちのことを理解してくれている」
選択肢を提示する「問題だけでなく解決策も考えてくれる」

信頼を失う行動

行動結果
問題を隠す発覚時に信頼崩壊
安請け合いする結局守れずに信頼低下
報告しない「何をしているかわからない」
一方的に決める「こちらの意見を聞いてくれない」

まとめ

ポイント内容
ステークホルダー特定プロジェクトに関わる全ての関係者を洗い出す
マッピング影響力と関心度で分類し、対応方針を決める
期待のマネジメント開始時に期待値を合わせ、定期的に確認
報告の使い分け相手に応じた頻度・内容・形式で報告
変更管理影響分析、トレードオフの明示、承認プロセス

チェックリスト

  • ステークホルダーマッピングを作成できる
  • 期待値を合わせるフレームワークを使える
  • 報告レベルを相手に応じて使い分けられる
  • スコープ変更依頼への対応手順を知っている

次のステップへ

次のセクションでは、「振り返りとKPT」を学びます。プロジェクトやスプリントの振り返りを通じて、チームの継続的な改善を推進する方法を身につけましょう。


推定読了時間: 30分