タイムマネジメントの技術
ストーリー
「優先度はわかった。でも時間が足りない気がして......」
渡辺マネージャーが頷いた。
「時間は全員に平等に1日8時間だ。 でも、同じ8時間でも成果に大きな差が出る。 それがタイムマネジメントの技術だ。 いくつかの実践的なテクニックを教えよう」
ポモドーロ・テクニック
25分の集中作業と5分の休憩を繰り返すテクニックです。エンジニアの集中力維持に効果的です。
基本サイクル
[25分 集中]→[5分 休憩]→[25分 集中]→[5分 休憩]→[25分 集中]→[5分 休憩]→[25分 集中]→[15分 長い休憩]
1回目 2回目 3回目 4回目 → 4回で1セット
エンジニア向けの運用ルール
| ルール | 詳細 |
|---|---|
| 25分間はSlack通知をオフ | 「集中中」ステータスを設定 |
| 割り込みは記録して後回し | メモに書いてポモドーロ終了後に対応 |
| タスク切り替えはポモドーロ間で | 25分の途中でタスクを変えない |
| 4ポモドーロで1セット | 1セット完了後に長い休憩を取る |
実際の1日の運用例
9:00 - 9:15 朝の計画立て(タスク確認、今日のゴール設定)
9:15 - 9:40 ポモドーロ1: 本番バグの調査
9:40 - 9:45 休憩
9:45 - 10:10 ポモドーロ2: バグ修正の実装
10:10 - 10:15 休憩
10:15 - 10:40 ポモドーロ3: テスト作成・PR作成
10:40 - 10:45 休憩
10:45 - 11:10 ポモドーロ4: PRレビュー対応
11:10 - 11:25 長い休憩(コーヒー、ストレッチ)
11:25 - 12:00 Slackの未読対応、メール返信
12:00 - 13:00 昼休み
13:00 - 14:30 ポモドーロ5〜7: API設計のドラフト
14:30 - 15:00 ミーティング
15:00 - 16:30 ポモドーロ8〜10: 新機能の実装
16:30 - 17:00 日報・明日の準備
タイムボクシング
タスクに予め時間の上限を設定する手法です。「完璧を目指して時間をかけすぎる」問題を防ぎます。
基本の考え方
タイムボクシングなし:
「バグ調査が終わるまでやろう」
→ 3時間経っても終わらず、他のタスクが全滅
タイムボクシングあり:
「バグ調査は1時間まで。それで解決しなければ相談する」
→ 1時間で得た情報を元に先輩と相談 → 30分で解決
エンジニアの作業別タイムボクシング目安
| 作業 | 推奨タイムボックス | 時間超過時のアクション |
|---|---|---|
| バグ調査 | 1時間 | 先輩やチームに相談する |
| コードレビュー(1PR) | 30分 | 主要な指摘だけ記載し、残りは別途 |
| 技術調査・PoC | 2時間 | 調査結果をまとめて判断を仰ぐ |
| 設計ドキュメント作成 | 2時間 | ドラフト段階でレビューを依頼 |
| ミーティング | アジェンダ通り | ファシリテーターが時間管理 |
重要な注意点
タイムボクシングは「時間が来たら諦める」ではなく、「時間が来たら状況を報告し、次のアクションを決める」ための仕組みです。
2分ルール
2分以内で完了するタスクは、その場ですぐやります。タスクリストに追加して管理するコストの方が高いためです。
2分以内で終わるタスクの例
- Slackの簡単な質問に回答する
- PRにApproveを出す(軽微な修正の場合)
- Jiraのステータスを更新する
- 短いメールの返信
2分を超えるタスクの場合
タスクリストに追加し、適切な時間に取り組みます。
依頼が来た
│
├─ 2分以内で終わる?
│ ├─ Yes → 今すぐやる
│ └─ No → タスクリストに追加
│ │
│ ├─ 緊急かつ重要? → 今のタスクを中断して対応
│ ├─ 今日中? → 次のポモドーロ間で対応
│ └─ 急がない? → 計画に組み込む
バッチ処理
類似のタスクをまとめて処理することで、コンテキストスイッチのコストを減らします。
コンテキストスイッチの代償
タスクA → タスクB → タスクA → タスクC → タスクA
各切り替えで15〜30分のロスが発生
1日に10回切り替えると → 2.5〜5時間のロス!
バッチ処理の例
| バッチ | タ スク | 推奨時間帯 |
|---|---|---|
| コミュニケーション | Slack確認、メール返信、質問回答 | 朝一、昼後、夕方 |
| レビュー | PRレビュー、設計レビュー | 午前中の1ブロック |
| 実装 | コーディング、テスト作成 | 午後の集中時間帯 |
| 管理 | タスク更新、進捗記録、日報 | 夕方の30分 |
1日のバッチ構成例
午前(集中系)
9:00 - 9:15 [管理] タスク確認・計画
9:15 - 10:15 [実装] 集中コーディング
10:15 - 10:45 [コミュニケーション] Slack・メール
10:45 - 11:30 [レビュー] PRレビュー
11:30 - 12:00 [実装] 集中コーディング
午後(ミーティング+実装)
13:00 - 14:00 ミーティング
14:00 - 16:00 [実装] 集中コーディング
16:00 - 16:30 [コミュニケーション] Slack・メール
16:30 - 17:00 [管理] タスク更新・日報・明日の準備
割り込み対応の戦略
エンジニアにとって最大の生産性キラーは「割り込み」です。完全に排除はできませんが、コントロールは可能です。
割り込みの分類と対応
| 種類 | 例 | 対応 |
|---|---|---|
| 緊急の割り込み | 本番障害、セキュリティインシデント | 即座に対応。現在の作業状態をメモしてから切り替え |
| 重要な割り込み | ブロッカーの解消依頼 | 現在のポモドーロ終了後に対応 |
| 低優先の割り込み | 「これ知ってますか?」系の質問 | バッチ処理の時間に対応 |
Slackステータスの活用
集中時: 「集中中 - 緊急時以外は後で対応します」
レビュー可: 「レビュー受付中 - PRどうぞ」
ミーティング: 「会議中 - 14時以降に対応します」
「ちょっといいですか?」への対応テンプレート
| 状況 | 回答例 |
|---|---|
| 集中作業中 | 「今作業中なので、11時以降でいいですか?緊急ならSlackに書いてください」 |
| すぐ対応できる | 「2分で終わるなら今やりましょう。長くなりそうなら時間を決めましょう」 |
| 自分の担当外 | 「それは佐藤さんが詳しいです。紹介しましょうか?」 |
エネルギーマネジメント
時間だけでなく、自分のエネルギーレベルに合わせ てタスクを配置することも重要です。
エネルギーレベルとタスクの対応
エネルギー
高 │ ★ 設計・実装 ★ 難しいバグ修正
│
中 │ ★ PRレビュー ★ ドキュメント作成
│
低 │ ★ メール返信 ★ タスク整理
│
└──────────────────────────→ 時間
朝 午前 午後 夕方
多くの人は午前中にエネルギーが高いため、創造的で難しいタスクは午前に、定型的なタスクは午後に配置すると効果的です。
まとめ
| テクニック | 効果 | 使いどころ |
|---|---|---|
| ポモドーロ | 集中力維持、疲労防止 | 日常的な作業全般 |
| タイムボクシング | 完璧主義の防止、時間超過の防止 | 調査、設計など終わりが見えにくい作業 |
| 2分ルール | 小タスクの滞留防止 | 日常的な依頼対応 |
| バッチ処理 | コンテキストスイッチ削減 | 類似タスクのまとめ処理 |
| 割り込み対応 | 集中時間の確保 | チーム作業中 |
| エネルギーマネジメント | 生産性の最大化 | 1日のスケジュール設計 |
チェックリスト
- ポモドーロ・テクニックのサイクルを理解した
- タイムボクシングの考え方と目安を説明できる
- 2分ルールを適用する判断ができる
- バッチ処理で効率化できるタスクを特定できる
- 割り込みへの対処戦略を持っている
次のステップへ
次のセクションでは、タスク管理を効率的に行うための「ツール」を紹介します。Jira、GitHub Issues、Notionなど、チームで使われるツールの活用方法を学びましょう。
推定読了時間: 25分