LESSON 15分

タスク管理の重要性

ストーリー

月曜日の朝、あなたのデスクにSlack通知が次々と届いた。

「先週のPRレビュー、まだ見てもらえますか?」 「新機能のAPI設計、今日中にドラフトほしいんですが......」 「本番でバグ報告が上がってます。確認お願いします」

3つの依頼が同時に来た。どれも急ぎに見える。 どれから手をつければいいのかわからず、手が止まった。

そこに渡辺マネージャーがやってきた。

「おはよう。顔色が悪いな。タスクが溜まっているのか?」

「はい......全部急ぎで、どこから手をつけたらいいか」

渡辺マネージャーは微笑んだ。

「仕事ができるエンジニアとそうでないエンジニアの違いは、 技術力だけじゃない。タスクを管理する力なんだ。 今月は『チームの信頼を勝ち取る』ための技術を身につけよう。 まずはタスク管理の基本からだ」


なぜタスク管理が必要なのか

エンジニアの仕事は「コードを書くこと」だけではありません。実際の業務では、複数のタスクを並行して進め、締め切りを守り、チームと連携する必要があります。

タスク管理ができないと何が起きるか

タスク管理ができないエンジニアの1日

  9:00  出社。メール確認して返信を始める
  9:30  Slack通知に反応してバグ調査を開始
 10:00  ミーティングに呼ばれる(準備なし)
 10:30  バグ調査に戻るが、どこまでやったか忘れる
 11:00  PRレビュー依頼に気づく(3日前の通知)
 11:30  新機能の設計に着手(が、割り込みで中断)
 12:00  午前中に何も完了していないことに気づく
        ......
 19:00  残業。バグ修正だけなんとか完了
        → PRレビューも設計も放置のまま

タスク管理ができるエンジニアとの違い

項目できないエンジニアできるエンジニア
朝一番メールやSlackに反射的に対応タスクリストを確認し、今日の計画を立てる
割り込みすぐ対応し、元の作業を忘れる緊急度を判断し、記録してから対応を決める
見積もり「すぐやります」と安請け合い所要時間を見積もり、現実的な期限を伝える
報告聞かれるまで報告しない定期的に進捗を共有する
締め切りギリギリで遅延が発覚早期に遅延リスクを報告する

信頼の方程式

チームメンバーやマネージャーからの信頼は、以下の要素で構成されます。

          信頼性 + 専門性 + 親密性
信頼度 = ─────────────────────────
              自己中心性
  • 信頼性: 約束を守る。期限を守る。言ったことを実行する
  • 専門性: 技術的なスキルと知識
  • 親密性: 相手の立場を理解し、共感できる
  • 自己中心性: 自分のことだけ考えていないか(低いほど良い)

タスク管理は特に「信頼性」を高めるための基盤です。

信頼を失う行動パターン

行動影響対策
締め切りを守らない「あの人に任せて大丈夫か?」見積もりを正確にし、遅延は早期に報告
依頼を忘れる「ちゃんと聞いてたのか?」全ての依頼をタスクとして記録
報告しない「何やってるかわからない」定期的な進捗共有を習慣化
安請け合いする「結局できなかったじゃないか」現実的な見積もりを伝える

タスク管理の基本プロセス

タスク管理は以下の5つのステップで構成されます。

[1. 収集]  → [2. 整理]  → [3. 計画]  → [4. 実行]  → [5. 振り返り]
  全ての        優先度を      いつ何を       集中して       完了後に
  タスクを      つけて        やるか         取り組む       改善点を
  書き出す      分類する      決める                       見つける

1. 収集(Capture)

あらゆるタスクを一箇所に集める。頭の中だけで覚えようとしない。

  • Slackでの依頼
  • メールでの依頼
  • ミーティングで出たアクションアイテム
  • 自分で気づいた改善点
  • コードレビューのコメント

2. 整理(Organize)

集めたタスクに優先度をつけ、分類する。

  • 緊急度と重要度で分類(次のセクションで詳しく学ぶ)
  • プロジェクト別、種類別に整理
  • 不要なものは削除

3. 計画(Plan)

いつ何をやるかを決める。

  • 今日やること、今週やることを明確に
  • 各タスクの所要時間を見積もる
  • バッファを含めたスケジュールを作る

4. 実行(Execute)

計画に沿って集中して取り組む。

  • 一度に一つのタスクに集中
  • 割り込みへの対処ルールを決める
  • 完了したらタスクを更新

5. 振り返り(Review)

定期的に振り返り、改善する。

  • 毎日の終わりに今日の振り返り
  • 週末に1週間の振り返り
  • 見積もりの精度を確認

エンジニアのタスク管理の特殊性

エンジニアのタスク管理には、他の職種にはない特徴があります。

集中時間の確保が重要

プログラミングの集中状態(フロー状態)

生産性
  ^
  |              ★★★★★ フロー状態
  |           ★★
  |        ★★
  |      ★
  |    ★
  |  ★
  | ★  ← 集中するまで約15〜30分
  +──────────────────→ 時間

  ※ 割り込みが入るとゼロからやり直し

エンジニア特有のタスク種類

タスク種類特徴
開発(実装)新機能のコーディングまとまった集中時間が必要
バグ修正本番障害の対応予測不能、緊急度が高い
コードレビューPRのレビュー短時間だが集中力が必要
設計・調査技術選定、アーキテクチャ設計思考に時間が必要
ドキュメントREADME、設計書の作成後回しにしがち
コミュニケーションミーティング、質問対応割り込みの原因になりやすい

まとめ

ポイント内容
タスク管理の目的チームの信頼を勝ち取り、確実に成果を出すこと
信頼の要素信頼性(約束を守る)が最も基本的な要素
基本プロセス収集 → 整理 → 計画 → 実行 → 振り返り
エンジニアの特殊性集中時間の確保と割り込みへの対処が鍵

チェックリスト

  • タスク管理ができない場合の具体的なリスクを説明できる
  • 信頼の方程式の4つの要素を理解した
  • タスク管理の5つの基本プロセスを挙げられる
  • エンジニア特有のタスク管理の課題を理解した

次のステップへ

次のセクションでは、タスクの優先順位をつけるための「優先度マトリクス」を学びます。「全部急ぎ」に見えるタスクを、客観的に整理する方法を身につけましょう。


推定読了時間: 15分