タスク管理の重要性
ストーリー
月曜日の朝、あなたのデスクにSlack通知が次々と届いた。
「先週のPRレビュー、まだ見てもらえますか?」 「新機能のAPI設計、今日中にドラフトほしいんですが......」 「本番でバグ報告が上がってます。確認お願いします」
3つの依頼が同時に来た。どれも急ぎに見える。 どれから手をつければいいのかわからず、手が止まった。
そこに渡辺マネージャーがやってきた。
「おはよう。顔色が悪いな。タスクが溜まっているのか?」
「はい......全部急ぎで、どこから手をつけたらいいか」
渡辺マネージャーは微笑んだ。
「仕事ができるエンジニアとそうでないエンジニアの違いは、 技術力だけじゃない。タスクを管理する力なんだ。 今月は『チームの信頼を勝ち取る』ための技術を身につけよう。 まずはタスク管理の基本からだ」
なぜタスク管理が必要なのか
エンジニアの仕事は「コードを書くこと」だけではありません。実際の業務では、複数のタ スクを並行して進め、締め切りを守り、チームと連携する必要があります。
タスク管理ができないと何が起きるか
タスク管理ができないエンジニアの1日
9:00 出社。メール確認して返信を始める
9:30 Slack通知に反応してバグ調査を開始
10:00 ミーティングに呼ばれる(準備なし)
10:30 バグ調査に戻るが、どこまでやったか忘れる
11:00 PRレビュー依頼に気づく(3日前の通知)
11:30 新機能の設計に着手(が、割り込みで中断)
12:00 午前中に何も完了していないことに気づく
......
19:00 残業。バグ修正だけなんとか完了
→ PRレビューも設計も放置のまま
タスク管理ができるエンジニアとの違い
| 項目 | できないエンジニア | できるエンジニア |
|---|---|---|
| 朝一番 | メールやSlackに反射的に対応 | タスクリストを確認し、今日の計画を立てる |
| 割り込み | すぐ対応し、元の作業を忘れる | 緊急度を判断し、記録してから対応を決める |
| 見積もり | 「すぐやります」と安請け合い | 所要時間を見積もり、現実的な期限を伝える |
| 報告 | 聞かれるまで報告しない | 定期的に進捗を共有する |
| 締め切り | ギリギリで遅延が発覚 | 早期に遅延リスクを報告する |
信頼の方程式
チームメンバーやマネージャーからの信頼は、以下の要素で構成されます。
信頼性 + 専門性 + 親密性
信頼度 = ─────────────────────────
自己中心性
- 信頼性: 約束を守る。期限を守 る。言ったことを実行する
- 専門性: 技術的なスキルと知識
- 親密性: 相手の立場を理解し、共感できる
- 自己中心性: 自分のことだけ考えていないか(低いほど良い)
タスク管理は特に「信頼性」を高めるための基盤です。
信頼を失う行動パターン
| 行動 | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 締め切りを守らない | 「あの人に任せて大丈夫か?」 | 見積もりを正確にし、遅延は早期に報告 |
| 依頼を忘れる | 「ちゃんと聞いてたのか?」 | 全ての依頼をタスクとして記録 |
| 報告しない | 「何やってるかわからない」 | 定期的な進捗共有を習慣化 |
| 安請け合いする | 「結局できなかったじゃないか」 | 現実的な見積もりを伝える |
タスク管理の基本プロセス
タスク管理は以下の5つのステップで構成されます。
[1. 収集] → [2. 整理] → [3. 計画] → [4. 実行] → [5. 振り返り]
全ての 優先度を いつ何を 集中して 完了後に
タスクを つけて やるか 取り組む 改善点を
書き出す 分類する 決める 見つける
1. 収集(Capture)
あらゆるタスクを一箇所に集める。頭の中だけで覚えようとしない。
- Slackでの依頼
- メールでの依頼
- ミーティングで出たアクションアイテム
- 自分で気づいた改善点
- コードレビューのコメント
2. 整理(Organize)
集めたタスクに優先度をつけ、 分類する。
- 緊急度と重要度で分類(次のセクションで詳しく学ぶ)
- プロジェクト別、種類別に整理
- 不要なものは削除
3. 計画(Plan)
いつ何をやるかを決める。
- 今日やること、今週やることを明確に
- 各タスクの所要時間を見積もる
- バッファを含めたスケジュールを作る
4. 実行(Execute)
計画に沿って集中して取り組む。
- 一度に一つのタスクに集中
- 割り込みへの対処ルールを決める
- 完了したらタスクを更新
5. 振り返り(Review)
定期的に振り返り、改善する。
- 毎日の終わりに今日の振り返り
- 週末に1週間の振り返り
- 見積もりの精度を確認
エンジニアのタスク管理の特殊性
エンジニアのタスク管理には、他の職種にはない特徴があります。
集中時間の確保が重要
プログラミングの集中状態(フロー状態)
生産性
^
| ★★★★★ フロー状態
| ★★
| ★★
| ★
| ★
| ★
| ★ ← 集中するまで約15〜30分
+──────────────────→ 時間
※ 割り込みが入るとゼロからやり直し
エンジニア特有のタスク種類
| タスク種類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 開発(実装) | 新機能のコーディング | まとまった集中時間が必要 |
| バグ修正 | 本番障害の対応 | 予測不能、緊急度が高い |
| コードレビュー | PRのレビュー | 短時間だが集中力が必要 |
| 設計・調査 | 技術選定、アーキテクチャ設計 | 思考に時間が必要 |
| ドキュメント | README、設計書の作成 | 後回しにしがち |
| コミュニケーション | ミーティング、質問対応 | 割り込みの原因になりやすい |
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| タスク管理の目的 | チームの信頼を勝ち取り、確実に成果を出すこと |
| 信頼の要素 | 信頼性(約束を守る)が最も基本的な要素 |
| 基本プロセス | 収集 → 整理 → 計画 → 実行 → 振り返り |
| エンジニアの特殊性 | 集中時間の確保と割り込みへの対処が鍵 |
チェックリスト
- タスク管理ができない場合の具体的なリスクを説明できる
- 信頼の方程式の4つの要素を理解した
- タスク管理の5つの基本プロセスを挙げられる
- エンジニア特有のタスク管理の課題を理解した
次のステップへ
次のセクションでは、タスクの優先順位をつけるための「優先度マトリクス」を学びます。「全部急ぎ」に見えるタスクを、客観的に整理する方法を身につけましょう。
推定読了時間: 15分