マルチクラウドの意義
ストーリー
「AWS の基本はしっかり身についたな。ここからは視野を広げよう」
山田先輩が3つのクラウドプロバイダのロゴが並んだスライドを見せる。
「中村製作所さんの基本システムは AWS で構築するが、 将来的にはマルチクラウドの可能性も検討している。 特定のクラウドに依存しすぎるリスクを避けたいんだ」
「マルチクラウドって、複数のクラウドを使うということですよね? なぜわざわざ複雑にするんですか?」
「いい質問だ。マルチクラウドにはリスク分散、ベストオブブリード、 交渉力の向上など多くのメリットがある。 ただし、複雑さも増す。そのトレードオフを理解することが大切だ」
マルチクラウドとは
マルチクラウドとは、複数のクラウドプロバイダを組み合わせてシステムを構築・運用する戦略です。
シングルクラウド:
┌─────────────────────┐
│ AWS │
│ [Web] [DB] [Storage]│
│ 全てのワークロード │
└─────────────────────┘
マルチクラウド:
┌──────────┐ ┌──────────┐ ┌──────────┐
│ AWS │ │ GCP │ │ Azure │
│ [Web] │ │ [AI/ML] │ │ [AD連携]│
│ [DB] │ │ [BigQuery]│ │ [Teams] │
└──────────┘ └──────────┘ └──────────┘
マルチクラウドを採用する理由
メリット
| メリット | 説明 |
|---|---|
| ベンダーロックイン回避 | 特定のプロバイダに依存しない |
| ベストオブブリード | 各プロバイダの強みを活かす |
| リスク分散 | 1つのプロバイダの障害時も影響を限定 |
| 交渉力 | 複数プロバイダを比較してコスト交 渉 |
| コンプライアンス | データの保管場所に関する法的要件への対応 |
| 買収・合併対応 | M&A で異なるクラウドが混在する場合 |
デメリット
| デメリット | 説明 |
|---|---|
| 複雑性の増加 | 運用・管理の負荷が増える |
| スキル要件 | 複数プロバイダの知識が必要 |
| コスト増加 | プロバイダ間のデータ転送費用 |
| セキュリティ管理 | 各プロバイダごとのセキュリティ設定 |
| 割引の減少 | 利用量が分散してボリューム ディスカウントが効きにくい |
マルチクラウドの主なパターン
パターン1: ワークロード分散
用途ごとに最適なクラウドを選択
メインシステム → AWS (EC2, RDS, S3)
データ分析 → GCP (BigQuery, Dataflow)
Office連携 → Azure (Active Directory, Teams)
パターン2: DR(災害復旧)
メインサイト: AWS (東京リージョン)
DRサイト: GCP or Azure (別プロバイダ)
AWS全体の障害時にも事業継続可能
パターン3: ハイブリッドクラウド
オンプレミス ←→ AWS (メイン) ←→ GCP (特定ワークロード)
オンプレミスとクラウドの組み合わせも「マルチクラウド」の一種
各クラウドプロバイダの強み
| プロバイダ | 強み | 代表的サービス |
|---|---|---|
| AWS | 最も豊富なサービス、エコシステム | EC2, S3, Lambda, DynamoDB |
| GCP | データ分析・AI/ML、コンテナ | BigQuery, Vertex AI, GKE |
| Azure | エンタープライズ、Microsoft連携 | Active Directory, Power BI, Teams |
マルチクラウド採用の判断基準
マルチクラウドを検討すべきか?
┌─ 特定クラウドに強く依存している? ──Yes──→ リスク分散を検討
│
├─ 異なるクラウドの強みを活かしたい? ─Yes──→ ベストオブブリードを検討
│
├─ 規制要件でデータの分散が必要? ────Yes──→ コンプライアンス対応
│
└─ 上記のいずれにも該当しない ─────────→ シングルクラウドで十分
(まず1つを深く学ぶ)
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| マルチクラウドとは | 複数のクラウドプロバイダを組み合わせる戦略 |
| メリット | ロックイン回避、ベストオブブリード、リスク分散 |
| デメリット | 複雑性増加、スキル要件、コスト増加の可能性 |
| 判断基準 | ビジネス要件に応じて必要性を判断。不要なら無理に採用しない |
チェックリスト
- マルチクラウドの定義と主なパターンを理解した
- メリットとデメリットのトレードオフを把握した
- 各クラウドプロバイダの強みを概観した
- マルチクラウド採用の判断基準を理解した
次のステップへ
次のセクションでは、GCP(Google Cloud Platform)の主要サービスを学びます。 AWS との対応関係を理解して、クラウド間の共通概念を把握しましょう。
推定読了時間: 20分