LESSON 25分

ネットワークの階層モデル

ストーリー

「先輩、プロトコルがたくさんあるのは分かったんですが、どう整理されているんですか?」

「いい質問だね。ネットワークの通信は"層"で整理されているんだ」

「層?」

「ケーキを重ねるように、下から順番に役割が決まっている。これを理解すると全体像が見えるよ」


なぜ階層に分けるのか

問題:すべてを一度に処理すると複雑になる

Webページを表示するために必要なこと:

  1. 電気信号をケーブルで送る
  2. 隣のルーターにデータを渡す
  3. 正しい宛先にデータを届ける
  4. データが確実に届いたか確認する
  5. Webページのデータを解釈する

これを全部1つのプロトコルで処理するのは大変です。

解決策:役割ごとに層に分ける

「手紙を書く」     → アプリケーション層
「書留にする」     → トランスポート層
「宛先を書く」     → インターネット層
「ポストに入れる」 → ネットワークアクセス層

各層が自分の仕事だけに集中し、下の層に処理を任せます。


OSI参照モデル(7層)

教科書でよく見る正式なモデルは7層です。参考として知っておきましょう。

名前役割
7アプリケーション層ユーザーに近い処理(HTTP, DNS)
6プレゼンテーション層データの形式変換(暗号化、圧縮)
5セッション層通信の開始・終了の管理
4トランスポート層データの信頼性(TCP, UDP)
3ネットワーク層宛先の指定と経路選択(IP)
2データリンク層隣接機器との通信(Ethernet)
1物理層電気信号・光信号の送受信

TCP/IPモデル(4層) -- 実務ではこちらが重要

実際のインターネットでは、OSIの7層を簡略化した TCP/IPモデル(4層) が使われています。

┌─────────────────────────┐
│  アプリケーション層       │  HTTP, DNS, SSH, SMTP
├─────────────────────────┤
│  トランスポート層         │  TCP, UDP
├─────────────────────────┤
│  インターネット層         │  IP, ICMP
├─────────────────────────┤
│  ネットワークアクセス層   │  Ethernet, Wi-Fi
└─────────────────────────┘

各層の役割

第4層:アプリケーション層

ユーザーが直接使うプロトコル が動く層。

  • HTTP/HTTPS:Webページの通信
  • DNS:ドメイン名の解決
  • SSH:リモートログイン
  • SMTP:メール送信

例え:手紙の「内容」に相当

第3層:トランスポート層

データの配送品質 を管理する層。

  • TCP:確実に届ける(書留郵便)
  • UDP:素早く届ける(普通郵便)

例え:「書留にするか普通郵便にするか」の選択

第2層:インターネット層

宛先の指定と経路選択 を行う層。

  • IP:宛先のIPアドレスを指定
  • ICMP:ネットワーク診断(pingで使用)

例え:封筒に「宛先住所」を書くこと

第1層:ネットワークアクセス層

物理的な通信 を担当する層。

  • Ethernet:LANケーブルでの通信
  • Wi-Fi:無線通信
  • 光ファイバー

例え:手紙を「ポストに入れて運ぶ」こと


データの流れ(カプセル化)

データが送信されるとき、各層で「ヘッダー」が追加されていきます。これを カプセル化 と言います。

送信側(上から下へ)

アプリケーション層:  [HTTPデータ]
                         ↓ TCPヘッダーを追加
トランスポート層:    [TCP][HTTPデータ]
                         ↓ IPヘッダーを追加
インターネット層:    [IP][TCP][HTTPデータ]
                         ↓ Ethernetヘッダーを追加
ネットワーク層:  [Eth][IP][TCP][HTTPデータ]

受信側(下から上へ)

ネットワーク層:  [Eth][IP][TCP][HTTPデータ]
                         ↓ Ethernetヘッダーを除去
インターネット層:    [IP][TCP][HTTPデータ]
                         ↓ IPヘッダーを除去
トランスポート層:    [TCP][HTTPデータ]
                         ↓ TCPヘッダーを除去
アプリケーション層:  [HTTPデータ]

手紙の例えなら、封筒を入れ子にしていくイメージです。


Webページ表示の全体像

ブラウザで http://www.example.com にアクセスしたとき:

1. [アプリケーション層] ブラウザがHTTPリクエストを作成
2. [トランスポート層]   TCPで確実に届ける準備
3. [インターネット層]   IPアドレスで宛先を指定
4. [ネットワーク層]     Wi-Fi/LANケーブルで送信
        ↓ (インターネットを経由)
5. [ネットワーク層]     サーバーが電気信号を受信
6. [インターネット層]   IPアドレスを確認
7. [トランスポート層]   TCPでデータを再構成
8. [アプリケーション層] WebサーバーがHTTPレスポンスを返す

まとめ

ポイント内容
OSI参照モデル7層の理論的なモデル(教科書向け)
TCP/IPモデル4層の実用的なモデル(実務向け)
カプセル化各層でヘッダーを追加してデータを包む
階層化のメリット役割を分離し、各層が独立して改良できる

チェックリスト

  • TCP/IPモデルの4つの層を順番に言える
  • 各層の役割を簡単に説明できる
  • カプセル化の仕組みを理解した
  • Webページ表示の通信の流れをイメージできる

次のステップへ

ネットワークの階層モデルが理解できましたね。

次のセクションでは、ここまでに出てきた用語を整理して、ネットワークの 基本用語 をまとめて覚えます。


推定読了時間: 25分