ネットワークの階層モデル
ストーリー
「先輩、プロトコルがたくさんあるのは分かったんですが、どう整理されているんですか?」
「いい質問だね。ネットワークの通信は"層"で整理されているんだ」
「層?」
「ケーキを重ねるように、下から順番に役割が決まっている。これを理解すると全体像が見えるよ」
なぜ階層に分けるのか
問題:すべてを一度に処理すると複雑になる
Webページを表示するために必要なこと:
- 電気信号をケーブルで送る
- 隣のルーターにデータを渡す
- 正しい宛先にデータを届ける
- データが確実に届いたか確認する
- Webページのデータを解釈する
これを全部1つのプロトコルで処理するのは大変です。
解決策:役割ごとに層に分ける
「手紙を書く」 → アプリケーション層
「書留にする」 → トランスポート層
「宛先を書く」 → インターネット層
「ポストに入れる」 → ネットワークアクセス層
各層が自分の仕事だけに集中し、下の層に処理を任せます。
OSI参照モデル(7層)
教科書でよく見る正式なモデルは7層です。参考として知っておきましょう。
| 層 | 名前 | 役割 |
|---|---|---|
| 7 | アプリケーション層 | ユーザーに近い処理(HTTP, DNS) |
| 6 | プレゼンテーション層 | データの形式変換(暗号化、圧縮) |
| 5 | セッション層 | 通信の 開始・終了の管理 |
| 4 | トランスポート層 | データの信頼性(TCP, UDP) |
| 3 | ネットワーク層 | 宛先の指定と経路選択(IP) |
| 2 | データリンク層 | 隣接機器との通信(Ethernet) |
| 1 | 物理層 | 電気信号・光信号の送受信 |
TCP/IPモデル(4層) -- 実務ではこちらが重要
実際のインターネットでは、OSIの7層を簡略化した TCP/IPモデル(4層) が使われています。
┌─────────────────────────┐
│ アプリケーション層 │ HTTP, DNS, SSH, SMTP
├─────────────────────────┤
│ トランスポート層 │ TCP, UDP
├─────────────────────────┤
│ インターネット層 │ IP, ICMP
├─────────────────────────┤
│ ネットワークアクセス層 │ Ethernet, Wi-Fi
└─────────────────────────┘
各層の役割
第4層:アプリケーション層
ユーザーが直接使うプロトコル が動く層。
- HTTP/HTTPS:Webページの通信
- DNS:ドメイン名の解決
- SSH:リモートログイン
- SMTP:メール送信
例え:手紙の「内容」に相当
第3層:トランスポート層
データの配送品質 を管理する層。
- TCP:確実に届ける(書留郵便)
- UDP:素早く届ける(普通郵便)
例え:「書留にするか普通郵便にするか」の選択
第2層:インターネット層
宛先の指定と経路選択 を行う層。
- IP:宛先のIPアドレスを指定
- ICMP:ネットワーク診断(pingで使用)
例え:封筒に「宛先住所」を書くこと
第1層:ネットワークアクセス層
物理的な通信 を担当する層。
- Ethernet:LANケーブルでの通信
- Wi-Fi:無線通信
- 光ファイバー
例え:手紙を「ポストに入れて運ぶ」こと
データの流れ(カプセル化)
データが送信されるとき、各層で「ヘッダー」が追加されていきます。これを カプセル化 と言います。
送信側(上から下へ)
アプリケーション層: [HTTPデータ]
↓ TCP ヘッダーを追加
トランスポート層: [TCP][HTTPデータ]
↓ IPヘッダーを追加
インターネット層: [IP][TCP][HTTPデータ]
↓ Ethernetヘッダーを追加
ネットワーク層: [Eth][IP][TCP][HTTPデータ]
受信側(下から上へ)
ネットワーク層: [Eth][IP][TCP][HTTPデータ]
↓ Ethernetヘッダーを除去
インターネット層: [IP][TCP][HTTPデータ]
↓ IPヘッダーを除去
トランスポート層: [TCP][HTTPデータ]
↓ TCPヘッダーを除去
アプリケーション層: [HTTPデータ]
手紙の例えなら、封筒を入れ子にしていくイメージです。
Webページ表示の全体像
ブラウザで http://www.example.com にアクセスしたとき:
1. [アプリケーション層] ブラウザがHTTPリクエストを作成
2. [トランスポート層] TCPで確実に届ける準備
3. [インターネット層] IPアドレスで宛先を指定
4. [ネットワーク層] Wi-Fi/LANケーブルで送信
↓ (インターネットを経由)
5. [ネットワーク層] サーバーが電気信号を受信
6. [インターネッ ト層] IPアドレスを確認
7. [トランスポート層] TCPでデータを再構成
8. [アプリケーション層] WebサーバーがHTTPレスポンスを返す
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| OSI参照モデル | 7層の理論的なモデル(教科書向け) |
| TCP/IPモデル | 4層の実用的なモデル(実務向け) |
| カプセル化 | 各層でヘッダーを追加してデータを包む |
| 階層化のメリット | 役割を分離し、各層が独立して改良できる |
チェックリスト
- TCP/IPモデルの4つの層を順番に言える
- 各層の役割を簡単に説明できる
- カプセル化の仕組みを理解した
- Webページ表示の通信の流れをイメージできる
次のステップへ
ネットワークの階層モデルが理解できましたね。
次のセクションでは、ここまでに出てきた用語を整理して、ネットワークの 基本用語 をまとめて覚えます。
推定読了時間: 25分