LESSON 30分

ストーリー

田中VPoE
「PoCの結果が出た。次はその結果をもとに、経営層が投資判断できるビジネスケースを作成する。ビジネスケースは、AI導入の『なぜ・いくら・いつ・どれだけ』を体系的にまとめた提案書だ。」
あなた
「企画書とは違うんですか?」
田中VPoE
「企画書は『何をやりたいか』を伝えるもの。ビジネスケースは『なぜ投資すべきか』を財務的根拠とリスク分析で示すもの。経営層の投資判断に必要な情報を過不足なく含む必要がある。」

ビジネスケースの全体構成

標準構成(7章構成)

1. エグゼクティブサマリー ← 最も重要(経営層はここだけ読む場合も)
2. 現状と課題
3. 提案するソリューション
4. 財務分析(コスト・効果・ROI)
5. リスク分析
6. 実行計画
7. 推奨アクション

各章の内容

目的含めるべき情報目安ページ数
エグゼクティブサマリー結論と全体像を1ページで投資額、ROI、推奨アクション1ページ
現状と課題変革の必要性を示す現状コスト、競合比較、放置リスク2-3ページ
ソリューション何をどう解決するかAI技術の概要、PoC結果3-4ページ
財務分析投資の合理性を示すTCO、効果推計、ROI、回収期間3-4ページ
リスク分析意思決定の判断材料リスク一覧、対策、残存リスク2-3ページ
実行計画実現可能性を示すスケジュール、体制、マイルストーン2-3ページ
推奨アクション具体的な次のステップ承認事項、必要リソース1ページ

エグゼクティブサマリーの書き方

構成要素

要素内容
課題の要約1-2文で現状課題を示す「請求書処理に年間3.2億円のコスト超過が発生」
提案の要約1-2文で解決策を示す「AI-OCR導入により処理の70%を自動化」
財務ハイライト投資額、ROI、回収期間「投資6,500万円、年間削減2.4億円、ROI 269%」
推奨アクション承認を求める具体的な内容「パイロット開始の承認と予算6,500万円の承認」

NetShop社のエグゼクティブサマリー例

■ エグゼクティブサマリー

【課題】
当社の請求書処理は月間3,000件を17名が手作業で処理しており、
年間コスト4.8億円(人件費3.6億円 + 関連コスト1.2億円)が発生。
処理時間5.2日/件は業界平均の2.6倍であり、競争力の低下要因。

【提案】
AI-OCR + RPA統合による請求書処理の自動化。
PoCで金額抽出精度96.5%を確認済み。定型処理の70%を自動化。

【財務効果】
  初期投資: 6,500万円(AI開発3,500万 + インフラ1,500万 + 導入支援1,500万)
  年間削減: 2.4億円(人件費1.8億 + 処理コスト0.6億)
  年間運用コスト: 3,000万円
  純年間効果: 2.1億円
  ROI: 269%(3年間)
  投資回収期間: 4ヶ月

【推奨】
パイロット開始の承認と初年度予算6,500万円の承認を要請。

現状と課題の分析フレームワーク

PEST分析でマクロ環境を整理

要因AI導入に関連する変化
PoliticalDX推進政策、AI規制の動向
Economic人件費上昇、インフレ圧力
Social労働力不足、働き方改革
Technological生成AIの急速な進化、コスト低下

「何もしない」場合のコスト

現状維持コスト機会損失合計
1年目4.8億円0.5億円5.3億円
2年目5.0億円(人件費上昇)1.2億円(競合との差拡大)6.2億円
3年目5.3億円2.0億円7.3億円

まとめ

項目ポイント
7章構成エグゼクティブサマリーから推奨アクションまで体系的に構成
エグゼクティブサマリー1ページで課題・提案・財務・アクションを凝縮
現状分析「何もしない」コストを示し、変革の緊急性を訴求
データ駆動PoC結果を根拠に具体的な数値で語る

チェックリスト

  • ビジネスケースの7章構成を理解した
  • エグゼクティブサマリーの構成要素を把握した
  • 「何もしないコスト」の重要性を理解した
  • PoC結果をビジネスケースに反映する方法を把握した

次のステップへ

次は「財務モデリング」として、ビジネスケースの核となる財務分析を詳しく学ぼう。


推定読了時間: 30分