LESSON 30分

ストーリー

田中VPoE
「ロードマップのPhase 1で取り組むFAQ自動回答が決まった。しかし、実際に着手する前にフィージビリティ(実現可能性)を評価する必要がある。」
あなた
「ここまでの分析で実現可能だとわかっているのでは?」
田中VPoE
「Step 3での評価は概要レベルだ。フィージビリティ評価では、技術的・ビジネス的・運用的な実現可能性をより詳細に検証する。ここで無理があるとわかれば、計画を修正する最後のチャンスだ。」
あなた
「着手する前の最終チェックということですね。」
田中VPoE
「そうだ。技術的実現性、ビジネス実現性、運用実現性の3つの観点で評価しよう。」

フィージビリティ評価の3つの観点

フィージビリティ評価
├── 1. 技術的実現性(Technical Feasibility)
│   └── この技術で本当に実現できるか
├── 2. ビジネス実現性(Business Feasibility)
│   └── 予算・期間・人員の制約内で実現できるか
└── 3. 運用実現性(Operational Feasibility)
    └── 導入後に安定的に運用できるか

1. 技術的実現性

評価項目

項目評価ポイント判断基準
AI技術の成熟度選択した技術は十分に成熟しているか類似事例が複数存在する
データの十分性必要なデータが量・質ともに確保できるかPoC開始に必要な最低限のデータがある
精度の見込み業務要件を満たす精度が達成できるか類似ケースの精度実績がある
システム統合既存システムとの連携が技術的に可能かAPI等の連携手段がある
インフラ要件必要なインフラが調達可能かクラウドサービスで対応可能

NetShop社FAQ自動回答の技術的実現性

項目評価根拠
AI技術の成熟度RAGベースのFAQチャットボットは多数の実績あり
データの十分性FAQ 200件+問い合わせログ30万件がZendeskに蓄積
精度の見込みカテゴリ分類の整理が必要。整理後は85%以上の精度が見込める
システム統合Zendesk APIで連携可能、ECサイトへのチャットウィジェット埋め込みも容易
インフラ要件GCPの既存環境を活用可能

2. ビジネス実現性

評価項目

項目評価ポイント判断基準
予算必要な投資額が確保済みか年間AI予算の範囲内
期間目標期限内に実現可能かマイルストーンが現実的
人材必要なスキルを持つ人材がいるか社内または外部で確保可能
ROI投資に見合うリターンが見込めるかROIがプラス
ステークホルダーの合意関係者の承認が得られるかスポンサーが確保できている

NetShop社FAQ自動回答のビジネス実現性

項目評価根拠
予算Phase 1予算800万円は年間予算3,000万円の27%
期間3ヶ月で実現可能(類似プロジェクトの実績あり)
人材ML経験者1名では不十分。外部パートナーの活用が必要
ROI年間2,520万円の削減効果、ROI 68%
ステークホルダーCS部長がスポンサー、社長も支持

3. 運用実現性

評価項目

項目評価ポイント判断基準
運用体制導入後の保守運用体制があるか担当者と責任範囲が明確
モニタリングAIの性能を監視する仕組みがあるかダッシュボードと閾値が設定可能
障害対応AI障害時の代替手段があるかフォールバック手順が定義済み
継続改善AIの精度を継続的に改善する仕組みがあるかフィードバックループの設計
ユーザーサポート利用者からの問い合わせに対応できるかサポート体制の構築

NetShop社FAQ自動回答の運用実現性

項目評価根拠
運用体制AI推進チーム3名で対応可能だが、夜間対応は未定
モニタリングGCPのモニタリングツールを活用可能。ダッシュボード設計が必要
障害対応有人チャットへの切り替えフローを設計済み
継続改善ユーザーフィードバックの収集仕組みを構築する必要あり
ユーザーサポートCS部のリーダーが社内サポートを担当

フィージビリティ総合判定

判定基準

判定基準
Go3観点すべてが○、または△が1つ以下
Conditional Go△が2つ以上だが、対策により解消可能
No Go×が1つ以上、または△が3つ以上で対策困難

NetShop社FAQ自動回答の総合判定

観点判定主な課題
技術的実現性○(△1つ)データ整理が必要
ビジネス実現性○(△1つ)人材の外部調達が必要
運用実現性△(△3つ)運用体制・モニタリング・改善の仕組み構築が必要

総合判定: Conditional Go

条件:

  1. カテゴリ分類の整理をPhase 1の最初の1ヶ月で実施
  2. 外部パートナー(RAG構築の経験者)を確保
  3. 運用設計をPoC段階で並行して策定

フィージビリティ評価のテンプレート

項目内容
ユースケース名(評価対象のユースケース)
技術的実現性○/△/× と根拠
ビジネス実現性○/△/× と根拠
運用実現性○/△/× と根拠
総合判定Go / Conditional Go / No Go
条件(Conditional Goの場合)(必要な条件のリスト)
推奨アクション(次に取るべきアクション)

まとめ

項目ポイント
3つの観点技術的・ビジネス的・運用的実現性を総合評価
技術的実現性技術の成熟度、データ、精度、システム統合
ビジネス実現性予算、期間、人材、ROI、ステークホルダー合意
運用実現性運用体制、モニタリング、障害対応、継続改善
総合判定Go/Conditional Go/No Goの3段階で判断

チェックリスト

  • フィージビリティ評価の3観点を説明できる
  • 各観点の評価項目を理解した
  • 総合判定の基準を把握した
  • Conditional Goの場合の条件設定を理解した

次のステップへ

次は「PoC設計」として、フィージビリティ評価を通過したユースケースのPoC計画を具体的に設計しよう。


推定読了時間: 30分