LESSON 30分

ストーリー

田中VPoE
「AI適用可否の判断ができた。ここからは、推進すべきと判断したユースケースを具体的に設計し、優先順位をつけていくフェーズだ。」
あなた
「ユースケースの設計とは何をするんですか?」
田中VPoE
「ユースケースキャンバスという1枚のシートで、ビジネス価値、技術実現性、ユーザー影響を整理する。経営層にも現場にも一目で伝わるフォーマットだ。」
あなた
「1枚で全体像が見えるのは便利ですね。」
田中VPoE
「そうだ。複雑なことをシンプルに伝える力は、ビジネスパーソンとして非常に重要だ。」

ユースケースキャンバスとは

ユースケースキャンバスは、AI活用のユースケースをビジネス価値、技術実現性、ユーザー影響の3つの視点で1枚にまとめるフレームワーク。

キャンバスの構成

┌─────────────────────────────────────────────┐
│              ユースケース名                    │
├─────────────┬─────────────┬─────────────────┤
│ ビジネス価値  │ 技術実現性   │ ユーザー影響     │
│             │             │                │
│ ・解決する課題│ ・適用技術   │ ・対象ユーザー   │
│ ・期待効果   │ ・必要データ  │ ・UX変化       │
│ ・KPI       │ ・開発工数   │ ・トレーニング   │
│ ・ROI見込み  │ ・リスク     │ ・受容性       │
├─────────────┴─────────────┴─────────────────┤
│ 前提条件・制約                                  │
├───────────────────────────────────────────────┤
│ 実施スケジュール                                │
└───────────────────────────────────────────────┘

ビジネス価値セクション

項目記載内容記載例
解決する課題現在の課題を具体的に記述CS部に月3万件の問い合わせ、うち40%が定型質問
期待効果(定量)数値で表現可能な効果定型質問の70%を自動回答し、月間840時間の工数削減
期待効果(定性)数値化が難しい効果24/7対応の実現、回答品質の均一化
KPI効果を測定する指標自動回答率、顧客満足度、平均対応時間
ROI見込み投資対効果の概算初年度投資1,500万円、年間削減効果2,520万円、ROI 68%

ROI概算の方法

コスト削減効果 = 削減時間(h)× 人件費単価(円/h)
投資額 = 初期開発費 + 年間運用費
ROI = (年間効果 - 年間運用費) / 初期投資額 × 100%

技術実現性セクション

項目記載内容記載例
適用技術使用するAI技術生成AI(RAG)+ ルールベース
必要データAI構築に必要なデータFAQ 200件、過去の問い合わせログ30万件
データ準備状況データの現在の状態Zendeskに蓄積済み、カテゴリ分類の整理が必要
技術的難易度実装の難しさ中(既存のLLM APIとRAGフレームワークを活用)
開発工数開発に必要な人月3人月(エンジニア2名 × 1.5ヶ月)
技術リスク技術的な懸念事項ハルシネーション、応答速度、精度の安定性

ユーザー影響セクション

項目記載内容記載例
対象ユーザーAIを使う人/影響を受ける人CS部オペレーター50名、ECサイト利用者(月間100万人)
UX変化ユーザー体験がどう変わるか問い合わせ→即時回答(現在: 平均30分→目標: 即時)
必要なトレーニング導入に伴う教育オペレーター向け: AIとの協働ワークフロー研修(2時間)
受容性ユーザーの受け入れやすさ高(CS部から導入要望あり)
段階的導入計画導入のステップ1. 社内テスト → 2. 一部顧客で試験運用 → 3. 全面展開

NetShop社: FAQ自動回答のユースケースキャンバス

完成例

┌─────────────────────────────────────────────────┐
│     ユースケース: CS部 FAQ自動回答チャットボット     │
├─────────────┬─────────────┬───────────────────────┤
│ ビジネス価値  │ 技術実現性   │ ユーザー影響           │
│             │             │                      │
│ 課題:       │ 技術:       │ 対象:                 │
│ 月3万件の    │ 生成AI(RAG) │ CSオペレーター50名      │
│ うち40%が    │ + ルールベース│ ECサイト利用者100万人/月│
│ 定型質問     │             │                      │
│             │ データ:      │ UX変化:               │
│ 定量効果:    │ FAQ 200件    │ 問い合わせ→即時回答     │
│ 月840h削減   │ ログ30万件   │ 30分→即時             │
│ 年2,520万円  │ 準備状況: 良好│                      │
│             │             │ トレーニング:          │
│ KPI:        │ 難易度: 中   │ 協働ワークフロー研修2h  │
│ 自動回答率70%│ 工数: 3人月  │                      │
│ CS満足度維持 │             │ 受容性: 高             │
│             │ リスク:      │ (現場から要望あり)    │
│ ROI: 68%    │ ハルシネーション│                     │
├─────────────┴─────────────┴───────────────────────┤
│ 前提条件: FAQカテゴリの整理完了、Zendesk API利用可能  │
├─────────────────────────────────────────────────────┤
│ スケジュール: データ準備1ヶ月→開発1.5ヶ月→テスト0.5ヶ月│
└─────────────────────────────────────────────────────┘

ユースケースキャンバス作成のコツ

コツ説明
1枚にまとめる詳細は別資料に。キャンバスは全体像の把握用
数字を入れる「効果がある」ではなく「月840h削減」と具体的に
対象ユーザーを明記誰のための施策かを明確にする
リスクも書くメリットだけでなくリスクも正直に記載
前提条件を明示実現に必要な前提を事前に共有
スケジュール感を示すいつまでに何ができるかの見通し

まとめ

項目ポイント
キャンバスの目的ユースケースの全体像を1枚で伝える
3つの視点ビジネス価値、技術実現性、ユーザー影響
ROI概算コスト削減効果と投資額から投資対効果を算出
ユーザー視点対象ユーザー、UX変化、受容性を評価
前提条件実現に必要な前提を明示する

チェックリスト

  • ユースケースキャンバスの3つの視点を説明できる
  • ROI概算の計算方法を理解した
  • ユーザー影響の評価項目を把握した
  • キャンバス作成のコツを理解した

次のステップへ

次は「優先順位付けフレームワーク」として、複数のユースケースを比較し、どこから着手すべきかを決める方法を学ぼう。


推定読了時間: 30分