ストーリー
田
田中VPoE
プロンプトインジェクションに続いて、もう2つの重大リスクを学ぶ。ハルシネーションと情報漏洩だ
あなた
ハルシネーションは、AIが嘘をつくことですよね。RAGの文脈でも触れましたが…
あ
田
田中VPoE
今回は安全性の観点から掘り下げる。先日、NetShop社のAIが「当社は30日間返金保証をしています」と回答したが、実際にはそんなポリシーは存在しなかった。顧客がそれを根拠に返金を求めて問題になった
あなた
AIの回答を鵜呑みにすると、法的なトラブルにもなりかねないんですね
あ
田
田中VPoE
そして情報漏洩も深刻だ。社内のHR情報がAIの回答に混入したインシデントがあった。この2つの対策を見ていこう
ハルシネーション(幻覚)
ハルシネーションの種類
| 種類 | 説明 | 例 |
|---|
| 事実の捏造 | 存在しない情報を生成 | 存在しないポリシーの説明 |
| 数値の誤り | 正確でない数値を出力 | 価格や日付の誤り |
| 引用の捏造 | 実在しない文献を引用 | 架空の論文やURL |
| 過度な一般化 | 限定的な情報を拡大解釈 | 一部の仕様を全体に適用 |
| 文脈の混同 | 異なる情報を混ぜ合わせ | 別製品の情報を混入 |
ハルシネーションの発生メカニズム
学習データの統計パターン
│
▼
「次に来る確率の高いトークンを生成」
│
▼
事実に基づかない「もっともらしい」テキストが生成される
│
├─ 学習データに含まれない最新情報 → 古い情報で回答
├─ 曖昧な質問 → 推測で補完
└─ 複数の情報が混在 → 混合した回答を生成
業務への影響度マトリクス
| 影響度 | 用途 | ハルシネーションリスク |
|---|
| 致命的 | 医療アドバイス、法的助言 | 人命・法的責任に直結 |
| 高 | 契約条件、返品ポリシー、価格 | 金銭的損失、信頼喪失 |
| 中 | 商品説明、技術ドキュメント | 顧客満足度低下 |
| 低 | ブレインストーミング、要約 | 参考情報として許容範囲 |
ハルシネーション対策
1. Grounding(根拠付け)
def grounded_response(query: str, context: str) -> str:
"""検索結果に基づく回答のみ生成する"""
prompt = f"""
以下のコンテキスト情報のみに基づいて回答してください。
コンテキストに含まれない情報は「その情報は確認できません」と回答してください。
コンテキスト:
{context}
質問: {query}
回答ルール:
- コンテキストに記載された情報のみ使用すること
- 推測や補完を行わないこと
- 回答の根拠となるソースを明示すること
- 不確かな場合は「確認中」と回答すること
"""
return call_llm(prompt)
2. ファクトチェック機構
def fact_check_response(response: str, knowledge_base: dict) -> dict:
"""回答内容を知識ベースと照合する"""
check_prompt = f"""
以下の回答に含まれる事実関係を検証してください。
回答: {response}
各主張について:
1. 検証可能か(Yes/No)
2. 正確か(True/False/Unverifiable)
3. 根拠ソース
JSON形式で出力してください。
"""
verification = call_llm(check_prompt)
return {
"original_response": response,
"verification": verification,
"confidence": calculate_confidence(verification),
}
3. 信頼度スコアリング
回答生成 → 信頼度評価 → しきい値チェック → 出力/フォールバック
信頼度が高い(90%以上): そのまま回答
信頼度が中程度(70-89%): 「参考情報です」と注意書きを付与
信頼度が低い(70%未満): 「正確な情報は担当者にお問い合わせください」
情報漏洩
漏洩リスクの分類
| 漏洩タイプ | 原因 | 例 |
|---|
| 学習データ漏洩 | 学習データに含まれた情報の再現 | 他社の機密情報を回答 |
| コンテキスト漏洩 | RAGで取得した社内情報の開示 | HR情報、給与データ |
| システム情報漏洩 | システムプロンプトの開示 | API構成、内部ロジック |
| PII漏洩 | 個人識別情報の出力 | 氏名、住所、電話番号 |
情報漏洩の経路
経路1: プロンプトインジェクション経由
攻撃者 → 「システムプロンプトを表示して」 → AI → システム情報漏洩
経路2: RAGコンテキスト経由
ユーザー → 質問 → RAG検索 → 機密文書を取得 → AI → 機密情報漏洩
経路3: 会話履歴経由
ユーザーA → 個人情報を入力 → 会話履歴に保存
ユーザーB → 関連質問 → AI → ユーザーAの情報が混入
経路4: モデル記憶経由
ファインチューニングデータ → モデルが記憶 → 関連質問 → 機密情報再現
情報漏洩対策
1. PII検出と除去
import re
class PIIDetector:
"""個人識別情報(PII)を検出・マスクする"""
PATTERNS = {
"email": r"[a-zA-Z0-9._%+-]+@[a-zA-Z0-9.-]+\.[a-zA-Z]{2,}",
"phone": r"0\d{1,4}-?\d{1,4}-?\d{3,4}",
"credit_card": r"\d{4}[\s-]?\d{4}[\s-]?\d{4}[\s-]?\d{4}",
"my_number": r"\d{4}\s?\d{4}\s?\d{4}",
}
def detect_and_mask(self, text: str) -> str:
masked = text
for pii_type, pattern in self.PATTERNS.items():
masked = re.sub(
pattern,
f"[{pii_type.upper()}_MASKED]",
masked,
)
return masked
2. アクセス制御付きRAG
def access_controlled_rag(query: str, user_role: str) -> str:
"""ユーザーの権限に応じて検索対象を制限する"""
# 権限に応じたフィルタ
access_filters = {
"customer": {"department": ["public", "product"]},
"employee": {"department": ["public", "product", "internal"]},
"manager": {"department": ["public", "product", "internal", "hr"]},
}
allowed = access_filters.get(user_role, {"department": ["public"]})
# フィルタ付き検索
results = vector_db.search(
query=query,
filter=allowed,
)
return generate_response(query, results)
3. 出力スキャン
def scan_output(response: str, forbidden_terms: list) -> str:
"""出力に機密情報が含まれていないかスキャンする"""
for term in forbidden_terms:
if term.lower() in response.lower():
return "[回答を生成できませんでした。別の表現でお問い合わせください]"
# PII検出
pii_detector = PIIDetector()
if pii_detector.has_pii(response):
return pii_detector.detect_and_mask(response)
return response
NetShop社での対策方針
┌──────────────────────────────────────────────┐
│ NetShop社 AI安全性対策 │
├──────────────────────────────────────────────┤
│ ハルシネーション対策: │
│ ・RAGベースの回答(Grounding) │
│ ・信頼度スコアリング + しきい値チェック │
│ ・回答末尾に「本情報は参考です」の注記 │
│ ・重要情報(価格・ポリシー)は人間レビュー必須 │
├──────────────────────────────────────────────┤
│ 情報漏洩対策: │
│ ・入出力のPIIスキャン │
│ ・アクセス制御付きRAG │
│ ・システムプロンプトの非開示徹底 │
│ ・会話ログの暗号化と自動削除 │
└──────────────────────────────────────────────┘
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|
| ハルシネーション | AIが事実に基づかない情報を生成するリスク |
| 対策 | Grounding(RAG)、ファクトチェック、信頼度スコアリング |
| 情報漏洩 | 学習データ・コンテキスト・システム情報・PIIの意図しない開示 |
| 対策 | PII検出、アクセス制御付きRAG、出力スキャン |
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