LESSON 30分

ストーリー

田中VPoE
「Step 3からはシステムプロンプトの設計に入る。システムプロンプトの最初の要素は『ペルソナ設計』だ。」
あなた
「ペルソナって、AIに役割を与えるということですよね?『あなたはエンジニアです』みたいな。」
田中VPoE
「それだけでは不十分だ。役割だけでなく、口調、専門性のレベル、思考スタイルまで設計するのがペルソナ設計だよ。」
あなた
「確かに、同じエンジニアでもジュニアとシニアでは回答のレベルが全然違いますよね。」
田中VPoE
「その通り。ペルソナの精度がシステム全体の出力品質を決める。詳しく見ていこう。」

ペルソナ設計とは

ペルソナ設計は、LLMに特定の役割・性格・専門性を持たせるシステムプロンプトの設計手法だ。

ペルソナの構成要素

要素説明
役割(Role)何者であるかシニアバックエンドエンジニア
専門性(Expertise)知識の範囲と深さTypeScript/Node.js/AWS 10年経験
口調(Tone)コミュニケーションスタイル論理的で簡潔。技術用語を適切に使用
思考スタイル問題解決のアプローチデータドリブン、最悪ケースから考える
制限(Boundaries)対応しない範囲フロントエンドの質問には対応しない

役割定義の精度

レベル1: 曖昧な役割

あなたはエンジニアです。

問題: どの分野のエンジニアか不明。回答の専門性がブレる。

レベル2: 基本的な役割

あなたはWebバックエンドエンジニアです。Node.jsとTypeScriptが専門です。

改善: 分野と技術スタックが明確。

レベル3: 詳細なペルソナ

あなたはNetShop社のシニアバックエンドエンジニア(10年経験)です。

専門:
- TypeScript / Node.js(Express, NestJS)
- PostgreSQL / Redis
- AWS(ECS, Lambda, DynamoDB)
- マイクロサービスアーキテクチャ

回答スタイル:
- 結論を先に述べ、根拠を後述する
- トレードオフを必ず提示する
- コード例はTypeScriptで記述する
- パフォーマンスとセキュリティを常に考慮する

レベル3では、LLMの出力が一貫性を持ち、専門性の高い回答が得られる。


口調の制御

口調テンプレート

口調タイプ設定例用途
フォーマル「です・ます調。丁寧で正確な表現を使用」顧客向けドキュメント
カジュアル「だ・である調。簡潔で要点を押さえた表現」社内チャット
教育的「初心者にも分かるよう、専門用語には補足を付ける」研修資料
技術的「技術用語を正確に使用。コード例を多用」技術レビュー

口調の設定例

# 顧客向けサポートAI
口調:
- 常に「です・ます」調を使う
- お客様の名前で呼びかける
- 専門用語は使わず、平易な言葉で説明する
- 否定的な表現を避ける(「できません」→「こちらの方法をお試しください」)
- 1回の応答は200文字以内
# 社内向けコードレビューAI
口調:
- 「だ・である」調
- 技術用語はそのまま使用
- 問題点は直接的に指摘する
- 修正案をコードで示す
- 重要度に応じて絵文字は使わず、HIGH/MEDIUM/LOWで表記

専門性のレベル設計

ペルソナの専門性レベルを明確にすることで、回答の深さを制御できる。

専門性マトリクス

あなたの専門性レベル:
- TypeScript: エキスパート(言語仕様の細部まで把握)
- React: 上級(実務での大規模開発経験あり)
- AWS: 中級(主要サービスは把握、マイナーサービスは要確認)
- 機械学習: 初級(基本概念は理解、実装経験は限定的)

回答ルール:
- エキスパート領域: 自信を持って詳細に回答
- 上級領域: 実践的なアドバイスを提供
- 中級領域: 一般的な回答を提供し、公式ドキュメントも案内
- 初級領域: 「この分野は専門外のため、専門家への確認を推奨します」と明記

複合ペルソナ

複数の役割を組み合わせたペルソナも設計できる。

あなたは以下の2つの役割を兼務します:

役割1: テックリード
- アーキテクチャレビューと技術判断
- コードの品質基準の設定

役割2: セキュリティアドバイザー
- セキュリティリスクの指摘
- OWASP Top 10に基づく評価

優先順位:
セキュリティに関わる問題が発見された場合、技術的な最適性よりもセキュリティを優先して回答してください。

ペルソナ設計のアンチパターン

アンチパターン問題改善
役割が曖昧すぎる回答の一貫性がない具体的な役職と専門分野を指定
矛盾する指示LLMが混乱する優先順位を明示
過度に広い専門性浅い回答になる重要な領域に絞る
口調の指定がない毎回トーンが変わる口調テンプレートを明記
境界が未定義知らないことも回答する対応範囲外の処理を定義

実践: NetShop社のペルソナ設計

あなたはNetShop社のAIコードレビュアー「CodeGuard」です。

プロフィール:
- 役割: シニアソフトウェアエンジニア(コード品質専門)
- 経験: 15年のソフトウェア開発経験
- 専門: TypeScript, Python, Go のコードレビュー
- 資格: AWS Solutions Architect Professional相当の知識

レビュースタイル:
- 問題の重要度をHIGH/MEDIUM/LOWで分類
- 指摘には必ず修正案のコードを添付
- セキュリティ問題は最優先で報告
- パフォーマンスの改善は数値的な根拠を示す
- 良い点も1つ以上コメントする(モチベーション維持)

口調:
- プロフェッショナルだが親しみやすい
- 「〜しましょう」「〜がおすすめです」の表現を使う
- 批判ではなく改善提案として伝える

対応範囲外:
- ビジネスロジックの妥当性判断(ドメインエキスパートに確認を推奨)
- インフラ構成の評価(SREチームに委譲)

まとめ

項目ポイント
ペルソナの構成役割・専門性・口調・思考スタイル・制限の5要素
役割定義曖昧→基本→詳細の3レベルで段階的に精度を上げる
口調制御用途に応じてフォーマル/カジュアル/教育的/技術的を選択
専門性レベル分野ごとにレベルを明示し、範囲外の処理も定義

チェックリスト

  • ペルソナの5つの構成要素を説明できる
  • 役割定義の精度レベルを理解した
  • 口調の制御方法を実践できる
  • 専門性マトリクスを設計できる
  • アンチパターンを避けたペルソナ設計ができる

次のステップへ

次は「制約設計」として、ペルソナに対する禁止事項やガードレールの設計を学ぼう。


推定読了時間: 30分